「ゲームオブスローンズ」S5が配信されるのが待ちきれないので、S4終了時点での各キャラへの印象とかを語ってみようと思う。
未完の作品に対してあれこれ言うと見当違いなことになる可能性もあるが、それはそれで完結後に自分で読み返すのも面白そうだ。
ドラマS4までのネタバレあり。かなりぐだぐだ。
リトルフィンガー(ピーター・ベイリッシュ公)
お前からかよ! という感じだが、昨日は語り足りなかったので。
ドラマ初登場時から「わあ悪そうな人来た!」と思ってはいたものの、こんなに諸悪の根源だったとは。ヴァリスがドン引きするくらいだから仕方ないね!
S4までに判明している彼の主だった悪だくみといえば、
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ジョン・アリン毒殺
(ライサを味方に引き入れつつキングスランディングにスターク家を呼び出す作戦?)
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ブラン暗殺未遂の罪をティリオンになすりつける
(ラニスターとスタークを争わせるため?)
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エダードの情報がサーセイに筒抜け
(まずはエダードを社会的に抹殺したかった?)
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ジョフリー毒殺
(この王は担ぐにも値しないと思われた? タイレル家を共犯にしつつティリオンを陥れつつサンサに自分を頼らせた?)
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ライサ殺害
(これは悪だくみというか、ジョン・アリン事件のときからの規定路線だったのだろうが、ライサはもう用済みになったし、生かしておくとうっかりペラペラしゃべりそう&サンサが危険だったから)
そのほかにもあれこれやっていたが、大体こんなところだろうか。
こうやって書きだしてみるとスターク家の不幸は大体リトルフィンガーのせいな気がしてくる。恨むべきなのはラニスターよりこの人では。
なぜこの人がこんなにスタークを追い詰めたいのかといえば、やはり自分が「生涯唯一愛する人」を奪ったのが「スターク」だからなのだろう。
最初はブランドンが。彼の死後はエダードが。
リトルフィンガーから見たキャトリンは、ある意味でロバートから見たリアナに近い。つまり、ずっと好きだったのに報われず、別の男に奪われてしまったという状況(結局思い人を失ってしまうという結末もロバートと同じ)。
似た境遇のロバートがリアナを奪ったレーガー(とターガリエン家)にしたことと、リトルフィンガーがエダード(とスターク家)にしたことも、結果だけ見ればかなり重なっている。もちろん過程は異なるが。
この先の展開もロバートの行為と重なるとすれば、最終的にリトルフィンガーは王位簒奪までいくのかもしれない(トップに立つよりは裏で動く方が似合う人だと思うけども)。
ただ、リトルフィンガーの一連の悪だくみは明らかにキャトリン自身をも不幸に突き落とすだろうということは、リトルフィンガー並みの頭脳がなくても予想できる。
何しろ今のキャトリンはスターク家の一員でもあるのだから。
愛した相手が不幸になるのでは本末転倒ではないかと思うのだが、それも最初から織り込み済みだったとしか思えない。
そもそも彼が何を望んでいるのか、いろいろ考えてみたがなかなか結論が出ない。
彼は自分の望みが「everything」だと言ったり「唯一愛したのは君(ライサ)の姉」と言ったりしているが、はっきり言ってどの台詞も本心かどうかわからない。
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自分の企みでキャトリンが不幸になるとまでは考えていなかった
(そんなわけない)
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可愛さあまって憎さ百倍、自分を捨てた相手はいっそ不幸になるべきと考えた
(ありえなくはないけどいまいちしっくりこない?)
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スターク家を陥れ、キャトリンだけは助けて自分のものにしようとしていたがその部分は失敗した。フレイ家にはこれから報復する
(これもありえなくもないけど、リトルフィンガーは今のところ「計画通り」に見えるような?)
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キャトリンとのことはもうあきらめて、今はサンサ狙い。今度は「失敗」しないよう念入りにやる
(サンサは母親似だしありえなくはないかもしれないが、サンサに最初に会ったのはジョン・アリン殺害後だしちょっと弱い。ただサンサ以外のキャトリンの子供たちに対するスルーぶりを見ていると、サンサへの執着は特殊な気がする)
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恋愛脳は捨てた。今は別の目的がある。そのついでにスタークには不幸になってもらいたい。でもキャトリンやサンサにある種の執着は感じている
(今のところ個人的にはこの説を推したいが、まだわからない)
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今までにやったことは(キャトリンの死まで含めて)すべてキャトリンのため。ただしここでいう「キャトリンのため」とはリトルフィンガーによる独自解釈
(キャトリンの希望に沿うにしてはサンサ以外の子供たちをスルーしすぎのような)
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最初から「キャトリンへの恋心」自体が悪だくみの演出の一環。本来の目的のために「一途な恋に生きる男」というキャラづけが必要だった
(もしこれだったらすごく熱い展開だけど、キャトリンへの最初の恋心は本物な気がする)
思いつくままに書きだしてみたがほかにもまだありそうだし、どれもあやしいだけで決定的ではない。
何度も見直したS4E7「月の扉」で、リトルフィンガーはライサを突き落す直前に「I have only love to one woman」と言っている。字幕では「愛した女性は一人だ」となっていたが、これは現在形だから、直訳すると「私は一人の女性への唯一の愛を持っている(今も)」ということになりそうだ。
この台詞を信用するなら、リトルフィンガーは今もキャトリンを思い続けていて、これまでの行動もみんなキャトリンのためという解釈も可能だ。
ただしこの台詞自体が嘘という可能性があるのがリトルフィンガーさんの困ったところ(そして好きなところでもある)。
何しろ「私を信用してはいけませんよ」と自ら宣言するような人だ。基本的に「嘘つき村」の住人だと思った方がいいのではないか。
「I have only love to one woman」はサンサに聞かせるための台詞だったのかもしれない。「私はこういうキャラですから」と設定を教えるための。
これまでにこれはリトルフィンガーの本心かもしれないと思えたのは、
「If you want to build a better home, first you must demolish the old one(もっといい家がほしければ古い家は壊さないと)」(S4E7)
この台詞だ。
これが彼の本心だとすれば、彼が狙うのは王位簒奪どころではなく国家転覆なのかもしれない。
と、ここまで書いてから、彼について語るのにS3E6のリトルフィンガーvsヴァリスのシーンを外すなんてありえないと思って見直してきた。
長いけど自分のメモのために台詞を引用しておく(自分好みに訳したので間違いがあるかも)。
L「国家(Realm)ですか? 国家が何かあなたは知っているのですか? エイゴンの敵の1000本の剣と同じですよ。私たちが繰り返し語ろうと決めた物語です。嘘が真実となるまで、ね」
V「でもひとたび嘘を捨てたらどうなりますか? 混沌(chaos)という大きな穴が我々を飲みこんで……」
L「混沌は穴ではありませんよ。混沌は梯子なのです。登ろうとする者の多くは失敗し、二度と登れはしません。落ちて壊れるからです。登る機会を与えられる者もいますよ。彼らはそれを断って国家に、あるいは神々に、愛に――つまりは幻想にしがみつくのです。梯子だけが現実――そこにあるのは登ることだけ」
(ここでジョン・スノウの崖登りシーンに転換するの、上手すぎる)
うん、この記事を書き始める前にこのシーンを見直すべきであったことは明らかだ(#facepalm)。
やっぱりリトルフィンガーにとって愛も国家も幻想で、それは最優先事項にはなりえないものなのでは。
キャトリンへの愛は一部は真実だったとしても、今は主として「そういう設定」として利用しているだけなのでは?
某所のコメントに「ヴァリスは国家が平和な方が梯子を登るのは簡単だと考えている。リトルフィンガーは国家が混沌にある方が簡単だと考えている」とあり、これには納得させられた。これこそが国家や権力に対する二人の考え方の違いであろう。
問題は、彼は梯子を登ってどこに行こうとしているのかという点がまったくわからないことだ。
さあ、面白くなって参りました。
ここで「梯子」という言葉をチョイスするあたり、作者はキリスト教文化圏の人なんだなと思わされたり。もちろん「ヤコブの梯子」からの連想。
ただ一般的には(つまり非キリスト教圏であるところのウェスタロスの民であるピーター・ベイリッシュ公にとっては)梯子とは自立しないもので、何かに立てかけるか誰かに支えてもらうかしてもらわなくてはいけない。となるともしかするとリトルフィンガーの中にも「登ること」は支えてくれるもの(あるいは犠牲となるもの)の存在あってこそのものだという考えがあるのかも。
リトルフィンガーから始めていろんなキャラについて語るつもりだったのに、彼だけで終了してしまった。しかもgdgdになった上に語り足りないし。
まだ見落としていることがいろいろありそうだし、原作を読んだらわかることがあるかもしれない。
完結はまだ先だろうから、長く楽しめると思ってのんびり考えよう。