ダウントン・アビー・クロニクル―ドラマ『ダウントン・アビー』公式ガイド 伯爵家の人びと篇
ダウントンアビーS4を見終えた。
S3を見終えたのは数か月だが、衝撃の結末だったためさすがに内容を覚えていた。
メアリーはどうなってしまうのか。
まずはこれから見る人のためにネタバレなしで。
こんな人におすすめ
- イギリス文化に興味がある
- イギリス貴族社会に興味がある
- 20世紀初頭のヨーロッパの歴史に興味がある
- 執事などの仕事について詳しく知りたい
- 「英国王のスピーチ」を見た
- ヨーロッパの「大河ドラマ」を見たい
- 歴史群像劇が好き
こういうのが苦手な人は注意
- グロはないが、「大河ドラマ」なので人がばたばた死ぬ
- 事件がはっきりとした「解決」を見ないまま話が進行することが多い
- ヨーロッパ近現代史に関するある程度の基礎知識を前提としている
わたしが見始めたきっかけ
トップギアにヒュー・ボンネビルがゲスト出演し、そのときリチャード・ハモンドがこのドラマの大ファンだと知ったため。
(トップギアがきっかけで見た映画、ドラマは数知れない)
(゚∀゚) <レディ・メアリーが誰と結婚するか聞いてよ!!
なぜ面白いのか
この大作ドラマの面白さについてはさまざまな形で切り取って紹介することができるだろう。
ここではあえて、日本人目線で語ってみたい。
「ダウントンアビー」はイギリスの貴族屋敷を舞台にしたドラマである。
まずこの時点で多くの日本人にとってなじみのない世界だ。
漠然と華やかなイメージを持ってはいても、具体的にどんな生活をしているのかすぐに思い描ける人は多くはいまい。
要するに、ここで描かれているのは我々にとって「異世界」だ。
未知の世界にわたしたちを連れていってくれる。
「ドラマ」とはそもそも、わたしたちを日常世界から離れた世界へと一時的に連れていってくれるものだ。
このドラマにおいてはその「世界」が物理的な意味で「離れている」。
また時間的な意味でも離れている。
S1開始時点で時代設定は1912年だ。
視聴者の大半は生まれてもいないはずだ。
そしてもう一つ、実はこれこそが最も重要な点ではないかと思うのだが、主要登場人物は貴族とその召使である。
日本での視聴者の大半は貴族身分ではなく、家で大勢の召使を雇っているという人も少ないだろう。
わたしとしては文字通り「生きる世界が違う」という意味で、このドラマに「異世界」を感じている。
日常を少しだけ離れて知らない世界を垣間見る。
まさにドラマの醍醐味ではないか。
このドラマはその点において申し分ない。
圧倒的な舞台と脚本を用意して、存分にわたしたちの知らない世界を楽しませてくれる。
史実という名のネタバレ
歴史劇である以上、史実という名のネタバレは避けて通れない部分がある。
もちろん史実に詳しければ詳しいほど、いわゆる「二周目目線(これから何が起こるか知っている者の視点)」で物語を楽しむこともできる。
が、このドラマは史実をなぞりながらも架空の村、家を舞台にしている。
そのため厳密には史実を知っていてもネタバレにはならない。
(戦争開始時期やエドワード王太子の未来などについてはドラマで語られる前にわかることになる)
「英国王のスピーチ」などこの前後の時代のイギリスを舞台にした映画を見ていると、いろいろと楽しい部分もある。
ともかく誰が死ぬか、誰と誰がくっつくかといった部分に関するネタバレは史実にはないので(既に完結しているため探せばもちろんある)、そういう意味でハラハラドキドキできる歴史ドラマになっている。
オープニングについて
未視聴の方はぜひ一度このオープニングを見てほしい。
わたしは第一話でこのオープニングが始まった瞬間、絶対に最後まで見なければならないと感じた。
この質感、人と風景のバランス、視線の動かし方。
それらをとても丁寧に、大切に撮っている。
そしてこの音楽。
イントロが始まった瞬間、すでに決定的なことは終わってしまい、取り返しのつかない状態に置かれていることがわかる。
人生とはいつもそうで、取り返しがつかなくなったことの埋め合わせに追われながら、それでも懸命に生きていくしかないのだ――とでも言いたげな曲だ。
これはドラマ全体のテーマであり、レディ・メアリーのテーマでもあるとわたしは思う。
この曲とこの曲が持つ主題は、誰よりも彼女にささげられている。
イントロから刻みつづける弦とピアノの音程は、レディ・メアリーの声に近い(あの落ち着いた低い声が好きだ)。そして彼女の話し方は大抵、この曲と同じ「短調」だ。
しばしば自分のあずかり知らぬところで自分の運命に関する決定的なことが進行してしまうレディ・メアリーが、それでも自分の意思で進んでいこうとする物語。
多様な登場人物の誰もが魅力的ではあるが、それでもわたしはまずメアリーを目で追ってしまう。
美しく強い彼女の運命を、最後まで見届けたい。
(S5の配信はまだか)
ヴァイオレット様の魅力についてまったく語れていないので、次回以降たっぷり語ろうと思う。