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好きになる相手は選べない「ハンニバル」キャラ語り01

ドラマ版「ハンニバル」、面白くて二周目もそろそろ見終わる勢い。

レクター博士の楽しいレシピ本も予約したし、一緒にメイキング本もポチってしまった。早くこいこい。

せっかくだからレクター博士の楽しいガーデニング本も出そうぜ。特別ふろくにキノコ栽培キットとカタツムリ養殖キットもつけようぜ。

 

今日は久々に(「ハンニバル」では初めてだが)キャラ語りでもやってみようと思う。

ハンニバル」記事の目次はこちらから。

 

フランクリン

お前からかよ!2回目)という感じだが、彼から語ってみたい。

サイコパスからモテモテなウィルの反対属性として設定された、サイコパスに惚れがちな男。あの髪と髭もやはりウィルと対になるように設定されたものだろうか。

ウィルの反対属性なので、レクター博士に言い寄りまくるものの博士からの気持ちはまったく向かない。「お友達から始めましょう」と言われても「医者と患者のままで」と譲歩の余地なし。博士の職業倫理は高い(棒)。

診察室で博士と向かい合って座る場面で、(フランクリン)/ /(博士)な状態になっているのが見た目に面白い(フランクリンは身を乗り出しており、博士は背もたれに背を預けていると言いたい)。ウィルと博士の場合は(ウィル)\ /(博士)、もしくは(ウィル)| |(博士)になっていることが多い。またフランクリンの背後に、トバイアスにとどめをさすことになる鹿の像がしばしば映るのも意味深である。

7話(ソルベ)では水玉だったネクタイが、8話(フロマージュ)では博士とおそろいのペイズリー柄になっているのも気持ち悪さのポイントが高い。

彼が気の毒なのは、言い寄った相手が「せっかくプライベートで楽しんでいたところに割り込んでくるとは無礼」「勝手に関係を明かすとは無礼」「言い寄るとは無礼」「無礼な豚は食べられるべき」という価値観の持主だったことである。

もう一つ彼が気の毒なのは、まわりの人の気持ちを決定的に慮れないという点だ。周囲に溶け込むサイコパスの気持ちを常人が計るのは無理だとしても、あんなに嫌そうな顔の博士に押せ押せでアプローチするあたり、周囲がサイコパスだらけでなかったとしても友達には恵まれなかっただろうと思われる。孤独を恐れる彼が孤独を避ける術を持たず、一般的な意味での孤独などなんとも思わない博士が人を引きつけ、華やかなパーティを主催しているのを見るのは皮肉である(当然ながらあのパーティにフランクリンの席はない)。

フランクリンの考える友情はかなり一方的なものだ。「憧れの相手と同化したい」というのが彼の希望であり、そこに相手に対する本当の想像力は働いていないように思える。彼が正しく想像できたのは、トバイアスが彼に犯行を思わせる話をした理由だけだ。

自分に理解できる「語彙」のみによって世界を定義し分類し、その中で快適に生きる、彼はどこにでもいる「普通の人」で、つくづくウィルと対になるべくして作られたキャラクターだ。

 

作中でのフランクリンの役割は、博士にトバイアスを紹介することと、トバイアスの言葉を博士に伝えることだ。トバイアス事件は、フランクリンがいなくても一応成立する。歌を聴きに行った博士が、そこでフランクリンを介さずトバイアス(彼は音楽関係者だし、フランクリンに誘われなくても演奏会には行くだろう)と知り合う形でも事件は起こる可能性がある。ではなぜフランクリンが作られたのか。

バイアスとフランクリン絡みの一連の事件は、レクター博士に「友情」の概念を投与するのに必要だったと思われる。トバイアス事件以外は主としてウィルに投与されるべきものだったが、この事件はそういう意味でも少々異質である。

博士は「サイコパスとそうでない者との友情」の破綻を観察し、逆に「サイコパスとそうでない者との友情」が成立する可能性について考察した。自分が誰かと(具体的にはウィルと)友情を育むことは可能だろうか? 可能だとすればどのような手順を踏むべきか? という点についてより自覚的に考えるきっかけを与えたのがトバイアスとフランクリンだと考えられる。つまり博士は「興味があるだけ just curious」の状態から一歩進むことができたわけだ。

 

フランクリンのいちばんの見せ場は「フロマージュ」の終盤、「警官を二人殺した」と告白するトバイアスに向かって振るう熱弁である。これがもう、なんというか、目を覆いたくなる痛々しさで、博士の無関心そうな顔といい、トバイアスのイライラ感といい、役者さんすごいなという感じなのだが、「あなた(博士)になりたい」「あなた(博士)ならどう診断するか考えてる」とたびたび言っていたフランクリンがこれをペラペラ述べているという点が最高に痛々しい。ペイズリー柄のネクタイをして、サイコパスを目の前に、「博士ならきっとこんなふうにトバイアスを説得するはず!」という「彼の理想」を演じてみせたわけで、これはもうコスプレに近い。

でも、博士はそんなこと言わない。

博士も「私はそんなこと言わない」と言ってもよかったと思うのだが、言う前に首を折ってしまった。「もう聞いてらんない!」というわけか。

 

博士はトバイアスとの友情の可能性についても多少は考えただろう。しかし彼は、世界観を同じくする者よりも異種族との交わりを望んだ。「好きになる相手は選べない(博士談)」のである。

 

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