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王の壊れた横顔「ゲームオブスローンズ」S6感想

↑ゲームオブスローンズの2017年カレンダーが出るそうだ。中身の画像を見てみたところ、本編の印象的なシーンから抜粋されていて素敵なのだが、12月に満を持してホワイトウォーカーさんをチョイスするのいくない。君の顔を見たいのはむしろ8月だぞ!

 

ゲームオブスローンズ手帳も出るようだ。これも中身を見てみたところ、ウィークリー仕様で使いやすそう。裏表紙がウェスタロスの地図になっているし、これでいつ北へ逃げることになっても安心!

さて、いまだS6の興奮がさめず、何度も繰り返し見ている(特に最終回)。今日はトメンについて語ってみたい。例によってネタバレ全開につき注意。

 

トメン・バラシオン

気を抜くとラニスターの方にカウントしそうになり、そのたびにバラシオンだったと思いなおすのだが、実際のところは純度100%ラニスターであり、サーセイとジェイミーの(最後の)愛の結晶である。

S6における死者の中で最も印象的だったのは、実はトメンだった。9話のラムジーが最高だっただけに、あとは10話でS7につなぐ感じだろうと見ていたわたしを、ものすごい勢いで吹っ飛ばしてくれたサーセイ。そして呆然としているわたしの手を掴んで一緒に飛び降りるようなショックを与えたトメン。後出しの方が有利だということもわかっているのだが、やっぱりわたしの中でトメン株が瞬間的にに跳ね上がってしまった。

 

1-1でジェイミーがブランを塔から突き落とし、ここに来てサーセイがトメンを塔から突き落とす。物語は落下から始まり、落下によって終わりが始まる。サーセイの見事なキングスレイヤーぶりに拍手が止まらない(と思ったけど、そういえばロバートもサーセイが殺したんだから昔からキングスレイヤーツインズだった)。

 

S6のトメンは母親に揺さぶられ、マージェリーに揺さぶられ、すっかり宗教に染められて、王と神々が国家の二本柱とか言い出すし(中世風世界なのにルターの二国論か?)、これからサーセイの審判(もちろんマウンテン頼み)があるというのに決闘裁判禁止令を出すし、すっかり空きれい状態で見ていてつらかった。だがトメンは大聖堂爆発以前に、わたしが思っていた以上に壊れていたようだった。

あの何のためらいもない飛び降り。ベイラー大聖堂の爆発までは、

不穏な空気を流す→メイスター・パイセル死亡→ランセルラニスター刺される→マージェリーが怪しむ→ワイルドファイアを見せる→マージェリーが気づく→火種を見せる→マージェリーが「外に出ろ」と指摘→ろうそくの残りの短さを見せる→パニックになる大聖堂→ろうそくを取ろうとするランセル→そこからさらに煽りに煽る→ランセルの目の前で発火、爆発→大聖堂内部爆発→大聖堂の外に爆発が広がる(鐘がゴーン)→遠景から爆発を見せる→サーセイ乾杯

と、相当丁寧に視聴者の気持ちを高めつつ描写を重ねた。それに対比させるあのあっさり感!! 撮っているのも横顔用カメラと、あとは固定カメラ一台。呆然とするトメンの横顔、後姿と煙をあげる遠景の、絵のような美しさ。まるでトイレに行くような自然さで飛び降りてしまった若き王。シリーズ全体を通しても、わたしの中の印象的な死ランキングの上位に入る。

(そもそもこのドラマにおいて、自殺はレアである。スタニスの妻セリースは自殺で、あれも印象的ではあったが、そういえば死ぬ瞬間は見せていない)

(あとS6はシオン、マージェリー、トメンなどの横顔アップが特に目立った気がする。どれも美しさに息を呑む演出だった)

 

トメンの死の直後に入る "For house Lannister!!" \HEAR ME ROAR!!/ も、製作者の悪意がすごすぎて好きだ。「最後のバラシオン」が死ぬことでサーセイ大勝利が決定し、この時点でラニスター朝が開幕したのを暗示している。(その後のフレイの「我らの結束が何世紀も続くことを祈ろう」とかいうフラグ満載の台詞も好きだ。そこから即フラグ回収されるのも好きだ。S3からここまで、引っ張ったからなあ)

 

しかしトメン視点で考えてみると、壊れるのも無理はないようなキャラである。

・物心つく頃には両親は不仲

・兄は桁外れのサディスト

・叔父(実際には父親)はキングスレイヤー

父親に全然似ていない(アイデンティティに悩むこともあったのでは)

父親が不審死(母親は明らかに喜んでいる)

・トメンに対して唯一優しかったであろう姉がドーンに行ってしまう

・キングスランディングがスタニス(叔父)に攻められ、母親に殺されかける

・兄が結婚式で死亡

・キングスランディングの危機を救ってくれたタイウィン(祖父)がトイレで死亡

・戴冠するのはどう見ても死亡フラグだったが、ともかく戴冠

・嫁姑問題勃発

・マージェリー(妻)が投獄

・母親も投獄

・王様はいちばん偉い人だと思っていたのに誰も言うことをきいてくれない

・好きな人同士が仲良くしてくれない

・しぇいむしぇいむ

・姉が死体になって帰ってくる

・妻が宗教にはまる

・自分の支えになってくれた妻と、頼った宗教と、その他お世話になった人たちが一度に吹っ飛ぶのを目撃

・しかも犯人は母親(マウンテンの態度からトメンにも理解できた)

自分の身に一つでもふりかかったら精神を病む気がする。トメンはあまりにも「普通の人」であり、これらに心を痛めることができたために壊れてしまったのだった。

しかしこうしてみるとこれらの項目はほぼサーセイにも当てはまるわけだが、ストレッサーを全部叩きのめして玉座におさまる彼女は、やはりジョフリーと比べてもさらに桁外れのモンスターである。ていうか言ってることが完璧に快楽殺人鬼で戦慄する。

トメン戴冠シーンを見たときは、まさか自分がここまでトメンについて語ることになるとは思わなかった。最後の最後でもっていってくれたキング・トメンのために鐘を鳴らそう。\DING DING/

 

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