なぜ面白いのか

見たもの触れたものを保存しておく場所。映画、ドラマ、ゲーム、書籍の感想や考察。

感情表現の強制パレード「Caligula カリギュラ」感想

 

ここのところ「グランドツアー」の話題ばかりだったので、ちょっとこのへんでゲームの話でも。

最近買った「Caligula カリギュラ」というゲームがとても面白かった。以前から気になっていたのだが、秋になってからようやく買ったのだった。発売直後の楽しみは味わえなかったが、バージョンアップを繰り返した後だったようで(ver. 1.05で始めた)、かなり快適に遊べた。現在エンディングを見終えてやりこみを始めたところ。

巷にレビューの類はすでに出そろっていることと思うが、わたしも感想を書き残しておきたい。ストーリー本編に絡むネタバレはほぼ無し。これから買う人の参考になれば。

こんな人におすすめ

・敵の攻撃に合わせてカウンターを決めることに興奮を覚える

・おつかいクエスト大好き

・ボカロ文化が好き

・一人でいくらでも考察を楽しめる

・「クリミナルマインド」や「ベイツモーテル」の世界観が好き

 

 

戦闘について

上記にあるように、敵の攻撃に合わせてカウンターを仕込んでいくのが理由抜きに楽しい。カウンターが決まったときに紫色の字で「Counter!」と表示されることに喜びを感じる。

我ながらまったく他人に伝えようとする気のない文章になったので、もう少しわかりやすい説明を試みたい。

本作の戦闘では、戦闘コマンドを入力すると、そのコマンドを実行したときの仮の結果をアニメーションで見ることができる(「イマジナリーチェーン」と名前がついている)。その際、敵のとる行動をチラ見できる場合がある(コマンド入力前に敵が行動を始めている場合もある)。味方キャラの中には特定の攻撃に対してカウンター攻撃のスキルを持つ者がおり、これがうまく決まると、敵に大ダメージを与えることができる。

キャラによっては、ほとんどどんな場合にも有効な、命中さえすれば敵の行動を強制キャンセルできるスキルを使うこともできる(しかしそういうスキルは命中率が低めに設定されていたりする)。だから、ほぼどんなシチュエーションでも使えるスキルコンボの決まった流れを持っているプレイヤーは多いと思われる。効率のいいコンボを追求するプレイもきっと楽しいと思う。

ただわたしはキャラは満遍なく育てたい派で、育てたいメンバーをなんとなくパーティに入れ、そのメンバーでできるコンボを試行錯誤するのが楽しいと感じる。

また敵とエンカウントした際の配置や、敵の持つリスク値(高いほど大ダメージを与えやすい)、敵が最初にとる行動は毎回異なる。そういったシチュエーションに合わせてコンボをいじるのもまた楽しい。

おそらくこの一戦の中でもコマンドの組み合わせを試行錯誤できる戦闘システムを、煩雑だと感じる人もいるだろう。これはもう相性だと思われる。実際にはイマジナリーチェーンをフル活用するのはボス戦くらいで、ザコ戦はボタン連打でも勝てるようなバランスになっている。

 

クエスト

これも我ながら理由はわからないのだが、わたしはおつかいクエストを淡々とこなすのが好きである。「カリギュラ」には500をこえるモブがトラウマを解消してほしいと依頼してくるのでこれを片っ端から聞いていくことになるのだが(やらなくても本編にはまったく問題なし)、どういうわけかわたしはこの作業が楽しい。

大抵は(装備品)をモブに装備させる、(特定の場所やキャラのところ)へ行くなどの方法で解決できる。中には大変なものもあるが。

クエスト自体を楽しんでいるというよりは、クエストクリアによって見ることができる、モブの抱えた秘密を知るのが面白いのかもしれない。秘密はほんの一行ほどの記述で、軽めの内容から非常に重いものまでさまざまだ。たとえば「下ネタが嫌い」なはずのキャラが、クエストをクリアすると「実は下ネタ大好き」だと明かされたりとか。「動物や鳥の死骸を持ち帰る収集癖があり、特技は剥製作り」のキャラが、「愛する者を無機物に変えたい願望」を持っているとわかったりとか(しかもこのキャラのトラウマ、刃物収集依存症だし)。お前は「ベイツモーテル」の登場人物か!

味方キャラのトラウマも個別イベントで明かされるが、こちらは思ったよりもあっさりしていた。むしろたった一行で表されるモブの本性にドン引きすることが多い。

「クリミナルマインド」や「ベイツモーテル」の世界観が好きな方は、きっとモブの本性を暴く作業にはまるだろうと思う。なお「ハンニバル」に登場するクラスのキャラは今のところいない模様。

 

不満をあげるとすれば、モブの数はこの半分でいいから、もう少し会話とトラウマ内容のバリエーションを増やしてほしかった。内容があまりかぶっているとどうしても作業感があるので。あとはせっかくクラスごとに謎が用意されているのだし、簡単なものでいいから首謀者専用イベントがあったらなあ。

 

音楽

わたしはボカロ文化について詳しくないのであまり書けないのだが、そもそも「カリギュラ」は意思を持ったボカロや彼女のために曲を書くボカロPと、主人公側との対立を描いている。このため、戦闘中は常にボカロが歌っている(という設定の)曲が流れる(ダンジョンではボーカルなしバージョン)。

この曲が合うかどうかで、ゲームの印象はかなり変わるだろう。全体的にループが短いので、長時間ダンジョンを歩き回っていると総じて飽きるというのはある。マーラーのシンフォニーのような長大さでなくてもいいから、1ループがもっと長いと嬉しい。

 

www.youtube.com

公式動画で大体の雰囲気はつかめるだろうか。これだけの曲を歌い分ける声優さん、すごいな(上田麗奈さんらしい)!

個人的にはウィキッド、ソーンの曲はとても好きだ。彼らの狂い方がよく表現されていると思う。ソーンの歌なんて美しさと狂った和声が混在していて、そのアンバランスさがたまらない。

各ボカロP(作中では「ドールP」と表現される)の曲の歌詞は、それぞれのキャラのトラウマを反映したものとなっているため、彼らの本性を知ったあとで歌詞を眺めるとまた味わい深い。ちなみに本記事のタイトルはウィキッドの歌詞の冒頭である。

もちろん歌詞は本編のネタバレを含む。つまり曲の歌詞を聞いた時点で、敵の抱えるトラウマをある程度察してしまえるわけだ。これは意図して配置されたパズルのようなものだろう。特にソーンの歌詞を聞いたときの違和感と、その意味を察したときのぞくっとする感じは気持ちよかった。

 

考察

シナリオに関する感想を読みたくない方はここで引き返しましょう。

 

 

 

 

シナリオはいい感じにまとまっていた。タイトルと煽り文句からてっきり「クリミナルマインド」クラスのエピソードがじゃんじゃん盛り込まれているのだろうと思っていたわたしには、若干平和だな! と思うところがなかったわけではないのだが、この作品はそういう尖り方ではないのだ(尖っているのはモブの方だ)。

誰にでも起こりうるきっかけで現実を手放してしまったキャラクターたちの織りなす物語が売りなわけで、だからこそプレイヤーの共感を呼び、あるいはプレイヤー自身の抱えるトラウマを思い出させたりする力を持っているのである。

ゲームの感想を読んでまわっていると、お気に入りキャラや印象深いキャラエピソードがそれぞれ違うのが面白い。誰を気に入るか、どのエピソードが印象に残るかというのは、そのままその人のこれまでの人生を反映しているのだろう。

なんて前フリを書くと非常に言いにくいのだが、わたしの印象に残ったキャラエピソードは笙悟ちゃんだった。というか、このゲームのヒロインは笙悟ちゃんだろ!(公式4コマも好きだ)以前、私的意外なヒロイングランプリ2016優勝作品は「討鬼伝2」だと書いたが、「カリギュラ」もなかなか意外なヒロインであった。

ヒロインといえば、小説版「カリギュラ」ではあの子にスポットが当たっているというし、そちらもそのうち読んでみたい。

 

あとはとにかく500人のモブが織りなす人間関係が広すぎて、しかも舞台となる学校ではそれぞれ「殺された少女」だの「好意の矛先」だの、意味深なタイトルのついた事件が起こっているらしく、これを解き明かそうとすると膨大な時間がかかる。

しかも首謀者の本性を暴いても「このクラスではこんなことが起こってました!」と説明があるわけではない。気になるじゃないか!

なのでできる限りクエストをこなして、各クラスで何が起こっていたのか解明してみたい。とはいえ、まずは512人のキャラと出会って仲良くなるところからである。今確認してみたところ、なんと501人まで出会っていた。あと数人がどこにいるかも不明なわけだが、がんばってみよう。

もし気が向いたら、今度はクラスで起こっている事件についてネタバレあり考察をしてみたいところだ。