なぜ面白いのか

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神話の相対化「ゲームオブスローンズ」S7E6感想・2

昨夜(というか今朝)7-6の感想を途中まで書いて力尽きたわけだが、懲りずに後半を書きたい。ネタバレあり。

 

 

 

氷の湖

つい先日、映画「キングアーサー」(2004年版の方)を見たために、お? また氷が割れて敵全滅か? と身を乗り出したが、そこまで甘くなかった(キングアーサーの方は敵がワイトではないし、敵の数もあんなにめちゃくちゃではなかった)。

しかしあの氷の亀裂+ジェンドリーの猛ダッシュ(あんな一面コピー用紙を敷き詰めたような景色でよく地図もなくまっすぐ帰れたな!)+使い鴉の電波のような速さドラゴンによるジェット機並みのスピードのおかげで、マグニフィセントセブンはかろうじて救出されたのであった。いったいあの湖で何日過ごした設定なのだろう。まさか本当に一晩だけ?

先週、S7に入ってからどいつもこいつも瞬間移動だと書いたが、ホワイトウォーカーさんご一行だけは瞬間移動できないおかげでいまだに壁は超えられていない。もしかして壁の向こうで何か作業中(アニマルゾンビを増やすとか武器を作るとか?)だったのだろうか?

 

ともかくウェスタロスオールスター無双シーンは見応えがあった。ジョラーさんの短剣二刀流が、意外さもあっていちばん好きかな! あそこに至るまでの道で、初対面キャラ同士の関係性もある程度見せてくれていたおかげで、共闘シーンも熱かった。S7はああいう新しい関係性や再会シーンをじっくり見せる時間が少なかったものだが、こういうのが見たかったんですよと言いたい。

アマンドが湖に引き込まれるシーンでは正直もうだめかと覚悟を決めたが、まさかハウンドが助けてくれるなんて!! ジョラーさんも手を差し伸べてくれていた。トアマンドさんマジでヒロイン属性。ドラゴンに乗って逃げるとき、首を捻ってホワイトウォーカーの槍投げを確かめていたのもトアマンドさんだけだったし(かわいい)。

その後ドラゴンから落ちそうになるジョラーさんを、トアマンドとハウンドで助けるのもいい。この三人がそれぞれどんな道をたどってあそこにいたのかを思うと、胸がいっぱいになってしまう。

 

 

光の王

あの湖のシーンで少し引っ掛かった点がある。

ベレックが光の王に祈ったところだ。"Lord of Light, come to my darkness." である。

結果、彼らのところにやってきた救いは、ドラゴンに乗ったデナーリスだった。

以前から「光の王≒三つ目の鴉≒ターガリエン関係者?」的な考察というか妄想を垂れ流しているわたしとしては、やっぱりデナーリスと光の王は何か関係があるのかと結び付けて考えてしまう。

(このへん参照→ 光の王が求めるものとは・改「ゲームオブスローンズ」S6考察 - なぜ面白いのか

「夜の王 Night King」に対抗できるのは「光の王 Lord of Light」なのか?

ドラゴンに跨り炎でワイトを焼き尽くすデナーリスがあの場に現れたのは、ベレックの祈りと本当に無関係だろうか? あやしい…。

 

 

ベンジェン・スターク

序盤からちょいちょい出ていた彼が、とうとうお亡くなりになってしまった。マグニフィセントセブンの死は覚悟していたものの、そっちか……そっちが死ぬのか……。

S6ではくれなかった馬を、今度はくれたのだ。もう自分は乗らないから。彼は最期にナイツウォッチとして、人間を守る盾になったのだ。

これで本当に、残されたスタークはあの兄弟たちだけになった。

 

 

デナーリスとジョン

デナーリス……あんな新作コートを用意していたなんて……ジョンが北に帰る以前から、自分も北に行く気満々だったんだな!!!(やや無理のある深読み)

そしてとうとう、ホワイトウォーカーはデナーリスを敵に回してしまったようだ。モンスターペアレント(モンスターのペアレントの意味)を敵に回すと怖いぞ。

ゾンビドラゴンは脅威ではあるが、これで最終決戦の絵面がドラゴン対豆粒のようなホワイトウォーカーという地味なものにならずにすみそうだ。怪獣決戦は怪獣同士でやってもらった方が絵になるはずだ。

 

今回、デナーリスはジョンに協力を約束し、ジョンはデナーリスを「ダニー」と呼んだ。大きな発展である。

デナーリスは自分を自分で神格化し、それをよりどころとしてここまで戦ってきたところがある。あんな経験をすれば誰だって自分を神話の登場人物のように感じてしまうはずだ。あの長い長い名乗りは彼女の神話そのものを表している。

その彼女が、ジョンの体に残る傷痕を見て顔色を変えた。以前ちらりと耳にした、「ジョンは死んで蘇った」話が真実なのだとあれで理解したに違いない。

つまりジョンもまた「死からの蘇り」という神話経験をしている、自身と同格の神話の登場人物なのだとデナーリスは理解したわけだ。同時に自らの神話の相対化も起こった。マザーオブドラゴンズになって以降、彼女にとって初めての「相対化」だったはずだ。

そして自分と違ってジョンは、その神話を物語化していないしする気もないということも、彼女は悟る。彼の名乗りは "Jon Snow" ただそれだけだったから。つまりジョンは神話の登場人物でありながら、それをよりどころとしない、別の場所に強さの源を持つ人なのだ。おそらくそこまでデナーリスは自覚していないだろうけれど、しかし「そういう人」を相手にしていたのだということは無意識のうちにわかったはず。

 

一方のジョンは、デナーリスに「女王」ではなく「子供を失ったばかりの母」に対する態度をとった。目覚めて最初に口にしたのは "Thank you" ではなく "I'm sorry" というお悔やみの言葉。このときジョンは、ドラゴンを「兵器」ではなく「デナーリスの子供」だと認めていた。

その態度がジョンに「ダニー」と呼ばせたのだろうか。あのシーンはどきっとした。ジョンくん、女性経験少なめ設定の割には一気に距離を詰めますね。いいと思います。

結局「ダニー」呼びはあの一瞬だったが、このシーンで二人の同盟は確固たるものになったと思われる。

 

 

ジョンのほうれんそう

ところでジョンはあれだけ高速移動を繰り返しながら、ウィンターフェルに、というかサンサに報告・連絡・相談を欠かしすぎではないだろうか。まめにほうれんそうをしていれば、サンサはあんなに心労を重ねずにすんだのではないだろうか。

……と思ったのだが、よくよく考えてみるとこれもなかなか難しいかなという気もした。

以下に理由を箇条書きにしてみよう。

 

1. ドラゴンストーンに鴉はいるのか

まずはこれ。ドラゴンストーンは長い間放置されていた。スタニスの鴉は遠征にみんな連れていったかもしれないし、城に何羽か残っていたとしてもほぼ死んでしまったか逃げてしまったかのどちらかでは。

飛ばす鴉がいなければ、連絡のとりようがない。

 

2. ジョンがいたのは「敵地」

デナーリスたちが鴉を持ち込んでいたとしても、それをジョンにホイホイ貸してくれるとは限らない。彼はいきなり殺されてもおかしくない敵地に寡兵で乗り込んでいるのだ。

ドラゴングラス掘りについての交渉を進めながら(しかも相手は相手で戦争中である)「地元に連絡したいんで鴉貸してもらえませんかね」とは言いだしにくい状況ではなかろうか。

 

3. リトルフィンガーが読まずに食べた

まあ食べてはいないと思うけど、届いた手紙のうち都合の悪いもの(というかサンサを安心させるような内容のもの)はリトルフィンガーが勝手に処分している可能性は割とある。もし後でジョンに「手紙送ってたのに!」と言われたとしても「郵便事故じゃないですかね」と白をきれる程度には、鴉便はやはり不安である。

ただしジョンが手紙を送る描写すらないので、これは弱いかなと思っている。

 

という感じで今のところは納得しているのだが、しかしイーストウォッチ滞在中のダヴォスさん、きみは今週ウィンターフェルにも一報を入れるべきだったと思うぞ! ジョンはひとまずミッションを成功させたが、そのままさらに寄り道するから帰りは遅くなります的なことを一言入れていれば、来週起こるかもしれない惨事の一部は防げるのではないかな!(もうウィンターフェルが大惨事になるの前提)

 

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