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裏切りのウィンターフェル「ゲームオブスローンズ」8-4感想

 

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https://ew.com/tv/2019/05/02/kit-harington-game-of-thrones-episode-season-8-episode-4/

いつもゲームオブスローンズを見たあとは何から書こう…と茫然とするのだが、今日は何を書くべきか明らかだ。

いやほんと、今日は本当にわくわくしてテンションが上がりまくっている。盛り上がって参りましたと言わざるを得ない。一方で闇堕ち寸前の自分もいるが、よくよく考えてみればS1視聴時から小指最推しの時点でもともと闇堕ちしてるような人間だったわ! ガハハ!

まずは何をおいてもヴァリスの件。それから我らがサーセイの件。それからジェイミーとブライエニーの件。いってみよう。

ネタバレするよ!!

 

 

 

ヴァリスは今回何をしたのか

個人的に今回死ぬのを心配していたのは彼だった。そろそろリトルフィンガーとの再会(@あの世)がありえるのではないかと。いやいやその前にもうひと働きしてくれそうだな、彼は!

本当にヴァリスはぶれない。国家は民のために。政治は虐げられた自分のような人々のためにあるべき。国を荒廃させる政争はできるだけ避け、国家の安定に努める。

「コックのあるなしは重要」というのも、ウェスタロスのこれまでの歴史をよく知っているからこその発言だろう(ただここまできてヴァリスにあえてあんな男性主義的なセリフを言わせたため、逆説的に「そうならない」未来がほぼ確定してしまったような。視聴者も物語がここまできて「男子こそが正統な後継者でーす」では納得しないのでは)。

"Chaos is a ladder" 思想の正反対にいるのがヴァリスだったはず。

その彼が、たぶんデナーリスを見限った。

先日書いたとおり、彼女はここまで、誰よりも "Chaos is a ladder" を体現している。

ssayu.hatenablog.com

ストームボーンは国土を荒廃させ、無辜の民を殺す。今回でそのフラグは十分に立った。

そして一貫してぶれない彼が、キングスランディングに小鳥を放っていないわけがない(ストームズエンドに上陸してからそこそこの時間がたっているし、かつての情報網を再構築しているかもしれない)。サーセイの支度を知らないわけがない。

まだ一度見ただけなので状況を整理できていないが、たぶん今回のヴァリスは、手に入れた情報(=スコーピオンの製作状況とユーロン軍の進軍状況)をあえてデナーリスたちに渡さなかった。

ひょっとしたらこちらの情報を積極的に流した可能性すらあるかもしれない。デナーリスの戦力を削ぐために。ティリオンがかなり危機感を持って「やめろ」と言っていたから、本当にやっているかもしれない。

もし本当にやっていたなら重大な裏切りなのだが、ヴァリスにとってはデナーリスの態度こそが裏切りである。自分も死ぬ危険性があったが、それも覚悟の上か。

デナーリスの行軍はやはり無茶だったように思える。たぶん今回もサンサが正解。一度回復期間を設けるべきだった。

サーセイたちと対峙したシーン、デナーリスの連れてきた軍を見て「少なっ!」と叫んでしまった。残ったアンサリードはあれだけなのか。ドスラク人たちはもういないということか? 北部の人間はついてきていないということだよね? あの人数で、キングスランディングを落とすつもりなのか? マジで???

ドラゴンが二匹いれば楽勝! というつもりだったのだろうか。すでに一匹墜とされていたというのに? で、もう一匹墜とされてしまって?

3話が終わった時点で5話でレイガーが墜とされると予想したのだが、これは来週ドロゴンも死ぬ可能性がある気がする。

 

「情報」の使い方を誰よりも心得ているヴァリスが、ジョンの出生の秘密を知った。彼がこのカードを最高のタイミングで切ってくれるのを期待したい。サンサにレイゴルの死を伝える手紙を送ったのはヴァリスだったりする?

ちなみにジョンが「家族」に向かって秘密を打ち明けると言いだしたときは「マジで?」と真顔になった。そんなもん秒で広まるに決まってるじゃん。

わたしはジョンがいつ覚醒してくれるのかと8-1からずっと言っているのだが、そろそろこのまま何も知らないマンとして死ぬような気もしてきた。

お前な、サンサが何を心配しているのかそろそろ察してくれよ。サンサはネッドが首を落とされたのを目の前で見てたんだよ。で、ジョンの言動はネッドにそっくりなんだよ。そろそろジョンも「スターク」をやめないと(もうジョン以外全員やめてる)王都で死ぬと思われてるの。

あ、サンサがリトルフィンガー(とラムジー)に言及したのは素直に嬉しかった。彼のおかげで今の自分があると口にしてくれたことも。

ハウンドが王都にいた「小鳥」のことをちゃんと覚えていて、今の彼女を認めていることも。ジョンよりもハウンドの方がよほどサンサのことを理解してるんだよなあ

 

ヴァリスについて書いていたつもりが脱線しすぎである。

 

サーセイ様!!!

いやはやサーセイ様、そういうのをね、見たかったんですよねわたしは。GoTに求められているものをちゃんと理解していますよね彼女は。

ミッサンディが斬首という最期を遂げるとはさすがに予想していなかったのだが、同時にこれがGoTだよ~! とも思った。散々グレイワームに死亡フラグを立てているように見せて、こっちだったか! 上手いな!!! と、ショックを受けるよりも先に感嘆してしまった。

サーセイに関して、ティリオンが若干何も知らないムーブをしているのが気になる。

彼は「子供のことを自分以上に愛していたはず」とサーセイを説得しようとしていたが、甘すぎる。ティリオンは、サーセイ自身がトメンを殺したに等しいことを知らない(この件については詳しくはこちら→ ジークサーセイ!「ゲームオブスローンズ」S6感想 - なぜ面白いのか )。

彼女がどれほどの覚悟と選択の末に鉄の玉座についたのか、ティリオンは知らないのだ。そのことが結局、ミッサンディの明暗を分けた。

一方、ジェイミーはおそらく彼女の覚悟と選択についてある程度を察している

たぶんそこが、今度はティリオンとジェイミーの明暗を分けるのだろう。

サーセイのことを「モンスターではない」と思っているティリオンと、「自分が相手にしなければならないのはモンスターだ」と理解しているジェイミー。どちらにしてもハッピーエンドは1ミリたりとも見えない。期待が高まる!!!

 

騎士たちにセックスは必要か

最後にこの話。

わたしはブライエニーとトアマンドはもっと互いのいいところを知り合って仲良くなってほしいと思っていたので、ジェイミーとやっちゃうのかよ! というのが個人的な感想ではあるのだが、それはここでは横においといて。

ブライエニーは最初から、本当にいちばん最初から、恋する女性だった。

パーティで誰からもダンスに誘われない彼女を、レンリーだけが誘ってくれた。レンリーがゲイで、女性的な女性にひとつも魅力を感じないからだったわけだが、それでもそれは一生の誓いをたてさせるほどに大きく彼女の感情を揺さぶった。たぶん彼女があそこまで強くなれたのは恋心ゆえに、である。

レンリー亡きあと、彼女はキャトリンに仕え、レンリーの仇を討ち、そして今はレディオブウィンターフェル、サンサのもとに仕える騎士となった。

わたしは騎士として剣を振るう強い彼女のことが大好きだけど、同時にあんな見た目に育ったせいで(いやグウェンさんはめちゃくちゃ美しいしかっこいいと思うけどな! 原作ではでかい上に不細工設定なんだよ!)望んだ恋のひとつもできなかった彼女のことが心配だった。今の彼女は騎士であることに誇りを持っているけれど、それはもともとの彼女の望みそのものではなかったから。

だからこそわたしは、彼女のことを最初から「大きな女性」として好きになり、かつ「女性と男性が対等な関係でセックスする自由民」であるところのトアマンドと結ばれてほしかったのだがそれは今はおいといて!(二度目)

だって好きになる相手って選べないからさあ! ジェイミー、レンリーと似てるもんなあ! きっと彼女はああいう顔が好みなんだよね。

だからなんていうか、ウィンターフェルで再会したふたりが改めて恋に落ちたなら(一緒に旅をしたときから気持ちが通じ合っていたとしても、あのときは立場上それを言えなかったし、互いにそこまで成長できていなかったように思う)、わたしはそれを祝福したい。

最初に恋した相手と肩を並べる(結婚的な意味で)ことはできなかったけれど、ジェイミーなら肩を並べられるのだ。しかもジェイミーなら肩を並べて戦ってくれることもできるのだ。そんな相手、これから先に何人出会える?(とあまn以下略)死にに行くのがわかっていて行かないでほしいと思うのなんて当たり前だ。彼女の気持ちはすごくわかる。

 

だがジェイミー! お前は最終的にサーセイのところに行くならなんで彼女と寝たんだよお!!

いやわかる、わかるよ。このあとサーセイと対決することがもうジェイミーにとっても明らかなわけだし、「サーセイと対決する自分」であるために、サーセイとの決別の儀式が必要だったんだよね。

初めてサーセイ以外の人と寝てみた、というだけの意味ではない(いやまあ実際初めてなんだろうな……何なんだよあのぎこちない誘い方、中学生か)。

正しいことを選べる自分であろうとしたのだと思う。

きっとジェイミーにとってブライエニーは誠実さと良心の象徴なのだ。

だからブライエニーに自分の精一杯の気持ちを受け取ってもらうこと(叙勲以降の一連の流れ)は、「正しくないこと」をし続けてきた自覚のある彼にとってほとんど初めての「正しいこと」だったのではないだろうか。

一度「正しいこと」を選べたジェイミーはきっと、サーセイの前に立っても「正しいこと」を選べるのだろう。

あまりにもブライエニーの気持ちを無視した精一杯すぎる選択なのだが、彼には本当に初めてのことなのだ。誘い方と同じくらい、別れ方だってぎこちない。彼女をあんなふうに傷つけて終わりにするなんて、中学生か。いや本当に、中学生程度の恋愛経験もないのだ、彼には。半径50センチの人間関係で数十年間恋愛してきた人だから。そして普通の中学生なら失敗から学んで成長するところだが、たぶんジェイミーにとってはこれが最後の恋なのだ(もう死ぬと決めつけている)(いやブライエニーと再会してぶん殴られる展開でも全然いいんだよ……)。

そしてブライエニーよ、ジェイミーが帰ってこなかったからといってあなたが不幸になる必要はない。アリアみたいに、一度寝てみたけど一生一緒にいるわけじゃないと思ったって全然いい。あなたが高潔で誠実な人だということはよくわかっているから、最終的にトアマンドと結ばれても全然いい(まだ言ってる)。

 

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