なぜ面白いのか

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仲良くけんかしな「トップギア」考察

今日はわたしが映像コンテンツ(映画やドラマ、ドキュメンタリー、ゲームなど)、に対する興味を持つきっかけとなったBBCの番組「トップギア Top Gear」について書いてみたい。
ちなみに先に言っておくと、huluでかなりの回を視聴できる。

 

(車好きの人以外では)こんな人におすすめ

  • いい年したおじさんたちによる全力かつときどき知的な悪ふざけが見たい
  • 英国紳士たちによるキャッキャウフフを堪能したい
  • BBCが本気を出した映像美を堪能したい
  • とりあえず火薬多めの演出が好き
  • アメリカンジョークより毒の強い、自分を含む全方位爆撃型ブリティッシュジョークが好き

 

こんな人は注意

  • ブリティッシュジョークは毒が強すぎると感じる人
  • 下ネタ(日曜夜8時に放映できる程度のものではあるが)が苦手な人

 

まずはこちらを

youtu.be


全力の悪ふざけ、映像美、下ネタの雰囲気はこれで大体つかめると思う。
これは実写なのかと目を疑う場面もあるが、まぎれもなく実写であり、BBCの誇るfactual programme(棒)である。

 

わたしが見ようとしたきっかけ

番組を見始めた時点で、車に対する興味関心はまったく無し。
だから車のレビューパートではほぼ何を言っているのかわからなかった。

 

ではなぜ見ようとしたか。ショスタコーヴィチ交響曲第11番「1905年」の勉強をしていたのがそもそもの始まりだった。
当時、わたしの所属オーケストラがこの曲に取り組むことになり、肉体的にも精神的にもハードすぎるこの曲の背景について少しでも知ろうと、ネットで情報収集をしていた。


血の日曜日事件」について知るところから始まり、ソヴィエト時代を概観するうちに、トップギア共産主義車回を知った。
ラーダやモスクビッチをはじめとした「共産主義」と、イギリス国内で当時作られた “rubbish car” を比較したりする、歴史のお勉強+車レビュー+悪ふざけが混然一体となった、後から考えれば実にトップギアらしい企画であった。

 

番組のことが気になったわたしは、まずはネットに上がっている動画を片っ端から見ていった。youtubeに公式チャンネルがあるので手を出しやすい環境が整っていた。

 

それから関連書籍やDVDなども買い集め、さらに司会者たちの単独番組まで見るようになり、今では車の名前やパーツの名前なども少しはわかるようになった。

 

驚いたことに、最初の頃は字幕のない公式動画では司会者たちが何を言っているかあまりわからなかったというのに、今ではかなり聞き取れるようになっている。彼らのいわゆるBBC英語はかなり聞き取りやすいとはいえ、リスニング力は確かに向上した。
(huluにあるトップギア動画には字幕がついているのでご安心を!)

 

 

なぜ面白いのか

あやしげな英語教材のような文句は打ち切って本題に入ろう。


トップギアの面白さを端的に説明するのは非常に難しい。
ドラマや映画などとは違い、トップギアは企画ごとにコンセプトが異なる。
新車のレビューを真面目にやることもあれば、車が燃えたり爆発したりの悪ふざけもあるし、海外をボロ車で旅する回などは一つのドラマのようなストーリーもある。
だから「トップギアが好き」という人が集まったとしても、トップギアのどんなところが好きかはかなり分かれることになるだろう。

 

とはいえこのブログはわたしができるだけ客観性を排して主観的にものを語る場である。
トップギアの普遍的な面白さについては番組司会者の一人ジェームズ・メイの見解を紹介するだけにしておこう。

 

2014年1月のトップギアマガジンで、ジェームズは番組が成功した理由について「三人の意見が合わないこと」「上手い演出と見事なカメラワーク、スーパーカーの排気音を忠実にキャプチャしてくれる音声担当者のおかげ」「ズボンがずり落ちるとか迷子になるとかいう、誰にでもわかる普遍言語のような面白さ」などをあげている(結構意訳なのであまり真に受けないでください)。
わたしもこの指摘はかなり的を射ていると思う。特に、英語を母国語としない国においてもトップギアが人気なのは、このあたりの理由が大きいだろう。

 

さて、それではわたしはこの番組のどんなところに惹かれているかと言えば、きちんと語ろうとすると数千字ではとてもおさまらないのだが、一つあげるならば司会者三人のキャラクターとその関係性である。

 

ジェームズ本人も言っているように、三人はとにかく何についても意見が合わない。
特に車のレビューについては意見が合わない。
三人とも好みというかキャラクターそのものが違いすぎるのだ。
三人のキャラを簡単に紹介すると、以下のようになる。

 

■ ジェレミー・クラークソン(身長2メートル弱)

もともとジャーナリストにしてBBCの番組司会者だった。
“Power is everything.” “More is better.” などの台詞からわかるようにパワー厨。
エコカーよりエコドライブ重視。
運転していて楽しい車、より狂ったコンセプトの車を好む。
バイクは嫌い。
美しさの基準はクリスティン・スコット・トーマススカーレット・ヨハンソンである。
トップギアバンドではドラムを担当。
(`゚Д゚) <ぱわああああああ

 

■ ジェームズ・メイ(身長約185センチ)

音大卒のジャーナリスト。ピアノや作曲の腕前を番組で披露することもある。
方向音痴に加えて運転が遅いため「キャプテンスロー」と呼ばれる。
「繊細な髪型(自称)」や優しそうな見た目もあいまっておっとりしたキャラに思われがちだが、実は発言は三人の中で最も過激(ジョークも下ネタも)。
スーパーカーも好きだが、ご機嫌な大衆車も同じくらい好き。バイクや自転車も好き。
トップギアバンドではキーボードを担当。
J`・ω・) <料理する

 

■ リチャード・ハモンド(身長約170センチ)

BBCラジオのDJ。美術学校卒。末っ子ポジション。
ほか二人と比べて小柄なのと、ハモンドという名前から「ハムスター」と呼ばれる。
偏食家で虫嫌いなため、海外ロケではしばしば苦労する。
ゾンダやポルシェなど、いわゆる子供の憧れ的な車は大体好き。でもアルファロメオを所有したことがないのがコンプレックス。
バイクや自転車も好き。
トップギアバンドではベースを担当。
(゚∀゚) <歯の漂白はしてないよ!

 

ちなみに漫画やアニメのキャラ造形の鉄則として「シルエットだけでどのキャラかわかる」というものがあるが、三人は二次元キャラでもないのにこの要件を完璧に満たしている。
(身長差だけでなく体形、髪型も違うので、顔のシルエットと遠景のシルエットどちらでも見分けられる)

 

この個性豊かでバックボーンもまったく異なる三人が、とにかく番組中で罵り合う。これこそがこの番組の最大の魅力だとわたしは思う。
この番組を見るまで、英語という言語がこんなにも豊かな表現力を持つことを知らなかった。
罵倒語はこんなにも豊富だ。また率直な罵倒だけでなく信じられないほど婉曲な表現も可能だ。
「英語は単純で率直な言語で、それに比べて日本語は婉曲表現が多い」などとわたしに説明した高校の英語教師は、この番組を見て悔い改めるべきだ。
英語の映像作品といえばアメリカンコンテンツしか知らなかった当時のわたしも、彼らに土下座するべきだ。

 

この面白さは、ある意味で「トムとジェリー」の面白さに似ているかもしれない。
互いに相手を陥れようと日夜努めているのだが、そこには不思議な絆が存在することがわかる。そして共通の敵や困難な状況になったときは協力し合うのだ。
「仲良くけんかしな」というあれである。
そういえば、しばしば最終的に車や建物が全壊または半壊する点もトップギアとの共通点だ。

 

上でも書いたように、トップギアの魅力は回によって異なる。
またの機会に、お気に入り回の紹介をしながらもう少しディープに語ってみたい。

また現在三人はBBCでの Top Gear を降板し、amazon primeで新番組を作っている。
去年のCHM Liveでは「もうBBCの人間じゃないから何でも言える。FxxK!」なんて言っていたし、きっとBBCではできなかった新しい番組作りをしてくれるだろうと期待している。
そのうちここでも紹介できるといい。

 

最後に、BBCが作る番組の予告動画は毎回凝っていて好きなのだが、その中からいちばん好きなものを紹介して今回は終わりにしよう。

youtu.be

 

 

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