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"I..." には何が続いたか?リトルフィンガーの「ゲームオブスローンズ」S7E7感想

以前から当ブログのゲームオブスローンズ記事をお読みになっている方にはわたしが今どんな気分にあるかはお察しいただけるかと思うのだが、なんというか【お察しください】。

いつも以上にアレな気持ちを吐露してしまうことになりそうだけど本当に【お察しください】。

この先はネタバレと【お察しください】があるぞ! 避難しろ!

 

 

 

"I love you" を言えずに逝った

推しが喉をかき切られて苦しんで死ぬ様子をノーカットでお送りされたのは初めての体験だった。

でもそれを見て最初に思ったのは「ほぼ即死なんてぬるすぎでは?」だった。

以前書いたこちらの記事をもとに、友人とはこんな話をしていたというのに。

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いや実際、GoTの数ある死のなかでアレはずいぶん楽な方でしょ。でも苦しみを長引かせて殺すのはスタークのスタイルではないからな。仕方ない(妥協)。

しかし思ったより早い退場だった。漠然と、ロビンとサーセイより先には死なないだろうと思っていたから。

とはいえラストシーズンを控えたシーズンファイナルがリトルフィンガー一人に捧げられた(S6ファイナルの、あの大量死と比べてほしい)のはおいしい。

 

死の直前、喉を切られた彼は "I..." と言いかけて、続きを言えずに死んだ(そこすごく大事だと思うから字幕に出すべき)。

彼は最期に何を言いかけたのか。何を言えずに逝ったのか。

わたしはまず、"I love you" だと思った。その直前のせりふが "Sansa" だったし("Lady Sansa" ではなくただの "Sansa" だった)。

あるいは、この期に及んで何か自己弁護をしようとしていたのか。

自分が助かる道を最期まで探しながら逝ったのか。

どれもありえそうだし、どれも確信には至らない。それがとても彼らしくて、謎を謎のままにして逝ってくれたことは嬉しかった。

これまで徹底して腕っぷしではなく舌先で世界を翻弄し続けた彼が、その声を封じられて死ぬというのはとてもいい。最期に言いたかった何かを、結局伝えられずに逝ったのがとてもいい。歌えなくなった小鳥は死ぬしかないともいえる。

 

そしてきっと、その言葉が何だったとしても、サンサはそれを正確に理解して受け取ったのだと思うとさらにいい。

だって彼女はリトルフィンガーの唯一にして一番の弟子だから。

サンサの半分はスタークだとしても、今の彼女の半分は「ベイリッシュ」でできているから。「あなたは私の娘として生まれていたかも」と言ったピーターの言葉はきっとかなりの部分が本音で、彼からサンサへの愛は何割かは娘に向けるようなものだったのではないかと思う。特にS7に入ってからのピーターは明らかに彼女を「育てよう」としており、その成長ぶりを好ましく思っていたから。

ティリオン、サーセイ、タイウィンの薫陶を受けたサンサは、ピーターによって完成された。彼女はピーターのように世界を眺め、ピーターのように考えて、ピーターの思考をなぞり、その結果ピーターに「終わり」をもたらした。彼にとってそれはある意味本望だったかもしれない。

――自分が育てた彼女はこんなにも美しく、賢く、狡猾に、北を率いる「女王」として完成した。ネッド・スターク、お前にはできなかったことを私は成し遂げた。

そんなある種の誇らしい気持ちが、彼の一瞬の表情に感じられた(エイダン・ギレンがあの一連の演技で見せたさまざまなトーンの表情、役者の神髄を見せられた気がする)。実際のところ、北の連中だけではどうやってもサンサをあんなふうには育てられなかっただろう。彼女の忍耐強さと学ぶ姿勢もあったにせよ、リトルフィンガーの働きは大きい。

彼女の処刑スタイルが「スターク式」ではなかったことが、非常に示唆的である。

本来スタークの長は、処刑を宣告した者が自ら剣を振るって執行するものだった。

しかし今回、処刑を宣告したのはサンサ、執行者はアリアだった。それは「スターク姉妹+ブランが協力して諸悪の根源をやっつける」というシナリオである一方、サンサがスタークではなくベイリッシュとして完成したことをも意味するのではないか。

ピーターはたくさんの人を殺したが、自らが手にかけたのはライサ一人。大抵は他者を操って望む者に死を贈る。サンサが今回やったことも、ある意味でそれと同じだ。そしてそれでいいと思う。ピーターは志半ばで梯子から墜ちたけれど、「父親」としての彼は少しでも満足してくれていたらとても救われる。わたしが

 

 

エイダン・ギレンインタビューを読んで

ew.com

このインタビューが本当によくて、これについてはそのうち別記事でがっつり語りたいのだが、ここでは一つだけ、読んで感じたことを残しておく。

「ゲームオブスローンズ」の始まりにしてリトルフィンガーの行為のすべての動機でもあったキャトリンとの別れ、そして「ブランドン・スターク」(ネッドの兄の方)から受けた辱め(おそらく衆人環視の中での)。67話をかけて、彼は再びあのときと同じ状況に戻ってきた。

あれだけの数に囲まれて、その中にはアイリーの兵もいただろうに、誰一人味方はおらず、サンサと「ブランドン・スターク」に辱められた。

「自分の持ち札を見せたくない」とあまり多くは話していないけれど、あのときギレンさんとピーターは、キャトリンとブランドンのことを想っていた。

物語としてとても美しいし、あそこに立たされた彼のことを想うと胸がしめつけられる。

 

 

リトルフィンガーの遺体はどうなるのか

ピーターの遺体はウィンターフェルに葬られるだろうか。そうであってほしいと思う。

あの場所は、彼の愛した人たちの生きた場所だから。

きっと誰も花を供えには来ないけれど、梯子から墜ちた場所があそこだったことが、彼にとって少しでも意味のあることだったらいい。

しかしこれから夜の王来襲の最前線になるであろうウィンターフェルに新鮮な死体があるのはまずい。たぶん焼かれるのだろうな……。ゾンビ小指はいらないです。

 

 

サンサの真意は

このブログではリトルフィンガーの恋愛観については懐疑的なことを散々書いてきたのだが、S7に入ってからの彼の言動と表情を見ていて、サンサに対する一種の愛情は本物だと思うに至った。

ではサンサの方はいったいどうだったのだろう。

100%信用するなどということはありえないとしても(ライサ殺害現場にいたわけだし)、ひょっとしてほんの少しは恋心めいたものを抱いたりしていなかっただろうか。

「子供の頃からあなたを守ってきた」と言ったピーターに「私をボルトンに売ったくせに?」と返したときの表情と口調から、なんとなくそう感じたのだが目の錯覚かもしれない(急に自信をなくす)。なんだろ、「いっそ自分と結婚させればよかったのに」とでも言っているように思えて。

 

   (ここからちょっと追記)

でもそのあとのサンサの涙は本物だったと思う。

「たくさんの教訓をありがとう」と言いながら、サンサは泣いていた。長い時間を一緒に過ごして、共犯関係にもなり、守り守られる関係だった彼に死を告げることは、彼女にとってもやはり半身を裂かれる気がしたのではないだろうか。泣きながらも声を震わせないのは「レディ」としての、それからリトルフィンガーの弟子としての矜持のように思える。

たぶんブランは彼女のその感情も読んでいるし、アリアもさすがに気づいたことだろう。だからそのあと「姉さんは正しいことをした」と声をかけたのだ。

   (追記ここまで)

 

「屈折してたけど彼は私を愛してた」のシーンで見せたどこか寂しそうなサンサの横顔は(というか本当に横顔が映える女優さんだ)、両親の仇をとった達成感とは程遠かった。

もしも彼女が本当にピーターに対して何らかの感情を抱いていたとして、もちろんそんなことを北を統べる立場である彼女は絶対に口にできないし、これからも彼女の気持ちを我々が知ることはないだろう。

それでいいと思うし、今後のサンサの活躍が、そのままピーターの遺した遺志なのだと思うことにする。

 

 

「ゲームオブスローンズ」の終わり

リトルフィンガーの死とともに、「ゲームオブスローンズ」は終わったような気がする。

S8はきっと「氷と炎の歌」という原作タイトルがふさわしい話になるのでは。

 

 

若干のもやもや

という感じでこの終わりには概ね納得しているのだが、若干のもやもやもある。

ピーターの死がスターク姉妹の結束のダシにされてるやん!

いや、いいんだけどね! スターク崩壊の元凶が、まわりまわって結束のダシにされるのは王道展開だし物語として正しいと思うよ!

でも彼にはもっともっと事態をかきまわして、鉄の玉座に手をかけるところまでいってほしかった! 死ぬならそのあとがよかった!

 

あとね!

ブランの危険性を7-4で知っていながら、どうしてピーターともあろう人が何の手も打ってないの???

ブランの脅威をスルーしすぎで、これはブランの能力を想定した対策を何かとってるんだなと思ってたよ!!

ただしこれについては、上記のインタビューでギレンさん本人が語っていたのを読んだ。

「7-4でブランが彼に "Chaos is a ladder" と言ったとき、ゲームは終わりだと、少なくともうっすらとは感じていたと思う」

そしてそれでも彼がウィンターフェルから逃げなかったのは、「彼はリスクのある状況に自分を置くのが好き」だから? と、インタビュー内容をつなげて考えてみた。

終わりを予感しながら、それでも自分の意思であそこにとどまったというのなら、彼の選択には敬意を払いたい。

 

シナリオがあともう一手ほど上手く、リトルフィンガーの狡猾さを見せられていたらなあと思わなくはないのだが、こればかりは仕方ない。尺があることだし。

 

もっといろいろ語りたいことはあるが、ひとまず第一声として吐き出したいのはこんなところ。

S1からS7まで、たくさんの感嘆と溜息をありがとう、リトルフィンガー。

おつかれさまでした。

 

【まだまだ続くよ!】

ssayu.hatenablog.com

 

(さらに追記)

www.latimes.com

このインタビューもいい…。「"I..." の続きは墓まで持っていくのが僕の仕事だ」ってかっこいい…。

 

ssayu.hatenablog.com