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きっと知っていたサンサ「ゲームオブスローンズ」8-5感想

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https://twitter.com/HBO/status/1127710040759005184

今からめちゃくちゃ人格を疑われそうなことを言うが、わたしは見たいものが見られて大変満足している。ほぼ期待通りの展開だった。ここまでやってくれるとは!

さてさくさく感想書いて寝るぞ!(フラグ)

ネタバレ全開ですぞ!

 

 

 

 

 

BURN THEM ALL

このブログを2年前から読んでくれている方にはとっくに承知のことだとは思うが、わたしはS7が終わってからずっと、ずっとずっとずっとずっと、この言葉(みんなわかってると思うけど「ドラカリス」の英訳だよ!)を抱え続けていた。そのことに今日やっと気づいた。

たぶんこの公式ツイートを見たときに。

わたしは本当にこれが見たかった。ピーター・ベイリッシュのいないウェスタロスなんてナイトキングさんに滅ぼされてしまえばいいと割と本気で思っていたし、キングスランディングが焼き払われるのがめちゃくちゃ見たかった。

これはまあただの私怨なので一旦おいといて。

 

「ゲームオブスローンズ」はぬるいハッピーエンドになるはずがないとも思っていた。

正直、先週の時点でもデナーリスがキングスランディングを燃やすかどうかは五分五分だと思っていた。彼女はあまりにも燃やす気満々だったから、実際に燃やす前に誰かが彼女かドロゴンを殺す線がありえるのではないかと思った。

でも彼ら(制作陣のことである)はやった。やってくれた。

ここまでやってくれるなんて。

わたしは、デナーリスは最初からずっとこれがやりたかったんだと思った。彼女は「キングスランディングを灰にする」的な発言をずっとしていなかった?まさか本当にやるとはみんな思ってなかった?彼女が主人公だから?彼女が「女の子」だから?

強力な武力を手にした為政者は、どんな理想を掲げていようと、どんなに多くの賢人がそばにいようと、その武力を行使せずにはいられない。むしろその理想のためにこそ、武力を行使せずにはいられない。

「これ以上暴君に支配されないために」民間人を焼きますか! そうだよね~、そういうのいっぱい近現代史で見たし、今まさに行われている地域だってあるよね~。

やっぱりデナーリスは「アメリカ」の象徴だしドラゴンは核兵器だよね(もちろんやってるのは「アメリカ」だけではないけど、HBOがどこにあるかを考えれば、狭義では「アメリカ」の象徴ということでいいかと思う)。相手が跪くなら寛大な顔をするけど、そうでない相手には暴力を行使するんだよね。

マジギレしているアメリカ人を見て、うーんこういう反応か、と今のわたしは眺めている。あと一週間かけてもっとシナリオの分析、解説が進めば違う反応も現れるかもしれない。数か月前に平和記念公園と資料館を訪れたばかりのわたしとしては、いろいろと複雑な気分である。

ここについて今語りだすととても危険なので、今日はここまでにしておく。

 

狂王化スイッチとしてのミッサンディ

5話の中で心が痛んだのはここ。

ミッサンディとデナーリスの長い旅が、ふたりの間で育まれた絆が、今日ここに結実した。こんな形で。

彼女の最後の言葉は、「これ」を望んでいたのだろうか。

彼女の理想のクイーンは「これ」なのだろうか。

そしてデナーリスの暴れっぷりで若干かすんでいるが、グレイワームも完全に闇堕ちしている。降伏した相手を後ろから攻撃するか! マジか!

キングスランディング戦、一応最初のうちは戦闘員しか攻撃されていなかったのだ。

S8で投入されたという新キャラ黄金兵団の団長さんのあまりの出落ちっぷりに噴いたが、ともかくあのへんまでは戦闘員vs戦闘員だったのだ。

しかし結局デナーリスは民間人を虐殺し、グレイワームは降伏した相手、つまりその時点では非戦闘員だった者を攻撃した。

S7やS8前半ではあんなに頼もしく見えたドスラク騎馬隊が、キングスランディングでは完全に「野蛮な侵略者」にしか見えないのがすごい。ここにきてS1前半の印象を思い出させるなんて。

ミッサンディは「これ」を望んだのだろうか……。

あの「ドラカリス」があまりにも重い。ミッサンディの人生が、結局狂王誕生スイッチとして使われてしまったことが悲しい。

それから今日はサーセイについて語る気力がないのでこのことだけ。彼女の妊娠は結局想像妊娠というやつだったのかなと。S7からかなりの月日がたっているのに、彼女の体形に変化がなさすぎたので。

 

ゾンビ山さんとサンダー

「サンダー」呼びは泣いた。アリアとサンダーの二人旅、およそ二週間くらいはあったと思うのだが、そこにどんな会話があったのか。どんな食事があったのか。もはや妄想するしかないのだが、きっとあの「ありがとう」に至るドラマもあったに違いないのだ。

バトルオブウィンターフェルを生き延びたふたりが、最後に過ごした二週間。戦いに向かう道中とはいえ、それが心穏やかなものであったらと思う(道中ホットパイのいる宿屋に立ち寄ったりしていないかな)。

 

そしてかつて弟の顔を焼いた兄が、兜をとったら弟以上にひどい顔になっていた。サンダーは一瞬、何かリアクションをしかけたように見えた(ここあとで見直したい)。

あのときサンダーはいったい何を思ったのだろう。「お前もかよ」とか「ざまあみろ」とか思ったのだろうか。あの顔ははっきりとした対比になっている。醜さだけではない。表情のあるサンダーと、表情のないゾンビ山さん。

しかしゾンビ山さんが思った以上に人間やめてて(その割にはサーセイやクアイバーンの命令は聞かずに弟のことを認識していたようだけど)、アリアの(ドラゴングラス製とはいえ)一撃で死んだナイトキングさんより強いじゃねーか! と思った。

あとサンダーにとって兄は人生を賭けた敵討ちだったことはよくわかるのだが、たぶんゾンビ山さんは放っておいてもドラカリスもしくはレッドキープの瓦礫で死んだだろうから、あなたが一緒に死ななくてもよかったんだよ……とどうしても思ってしまう。もう一度トアマンドと憎まれ口をたたきあってほしかった。もう一度サンサと会って、これから国を立て直すのであろう彼女のそばにいてほしかったよ。

 

ヴァリスとリトルフィンガーの対比

リトルフィンガー推しとしては、ここは本当に制作陣にありがとうというほかない。

蜘蛛小指を最後の最後に対比させてくれて。

あの処刑シーンは7-7で見たウィンターフェルのグレイトホールを思い出させる。暗い空間、黒い壁、「クイーン」が前に立ち兵に囲まれる構図。

最後まで抗って処刑されたリトルフィンガーと、何もかも受け入れた上で「私が間違っていることを望む」と言って処刑されたヴァリス

ヴァリスがリトルフィンガーよりも苦しい死に方になるとは。いやリトルフィンガーの死に方はGoT死に方ランキングでは楽な方から数えた方が早いな。小指ちゃんはパイにされなくてよかったねえ。

しかしあの場において、デナーリス本人とグレイワーム以外の誰もが「この処刑は間違っている」と思っていたのではないのか。そして誰もが恐怖ゆえに口をつぐんだ。

もはやジョンだって「愛ゆえに彼女の行為を容認した」とは言えない状態だったのではないだろうか。はっきり言って、わたしにはあそこでヴァリスの処刑を黙認したジョンは(ジョンとヴァリスは接点ゼロだったから、ヴァリスがどんな理想を持ってデナーリスに背いたかなんて知らなかっただろうが)闇堕ちしたも同然に見えた。

ジョンは、ティリオンのように最悪を想定して必死で自分にできることを探したわけでもない。盲目的に「玉座にはつかない」「愛している」と繰り返すだけ。あの処刑を見ていたなら、こうなることはもうわかりきっていたはず。このことについてジョンは「何も知らない」とは言えない。彼は目をそらしていただけだった。

彼ももうだめだ。もうだめだと思う。やはりジョンはオイディプス王だ。

もしもここからジョンの覚醒を描くなら、相当に、本当にうまくやってくれ。

ニードルは、ジョンがアリアに授けたニードルは、ジョンが愛したデナーリスを貫くのだろうか? それともジョン自身を貫くのだろうか。アリアはウィンターフェルに戻って以来、訓練でしかニードルを抜いていない。最後の最後にとってあるのだろう。

 

きっと知っていたサンサ

さてサンサはどこまでこの事態を予測していただろうか。

ティリオンにジョンの出生の秘密を伝えることで、デナーリス陣を割ることが主目的だったはず。デナーリスに「ジョンの裏切り」を悟らせることがもうひとつの目的だった。たぶんここまでは事態を正確に予想していただろう。

Family against family, sister against sister というリトルフィンガーの教えを、ここでもきっちり守っている。味方同士を争わせることこそが彼の最も得意とすることだったはず。このあたりはもう、サンサの成長ぶりにあの世でピーターくんも拍手喝采に違いない。

 

ではキングスランディングが燃えることは?

たぶん「ありえる」と予想していただろう。本当にそうなるかどうかはともかく。

少なくとも大きな戦いが起こって民が疲弊し、南部がある程度荒廃することは想定しただろう。

サンサにとってキングスランディングは、非常に乱暴に言えば燃えても惜しくない土地だったということだろうか? まあいっこもいい思い出ないからなあ! ネッドが処刑されて、ジョフリーに暴力を振るわれて。そういう場所だからなあ。

そして間違いなく、キングスランディングの弱体化、レッドキープの権威失墜は、北部の独立性保持という観点においてはプラスになるのだ。ここまでやることを想定していたかどうかはともかく、だ。彼女は「ここ」を守ったことになる。物流とかどうすんのという話はとりあえずおいといて。

 

それからブラン様。きっとこの結末を知っていたのだ。とっくにGoT最終回まで見ているのに何ひとつネタバレしないブラン様。あなたが神か。

アリアが乗った白馬はブランなのか? というツイートを見ておおお! と感激してしまった。それはありえるかもしれない。

 

最後にダヴォスについて。

3話でメリサンドルを殺さなかったダヴォス。

今回、サーセイとジェイミーを逃がすことができなかったダヴォス。

ここまで生き延びた彼が最後に担う役割とは何か。

わたしは、彼がデナーリスを殺す展開も見たいと思っている。

今回、鹿の人形を持ったまま燃えた死体があったから。

罪のない少女を燃やす女を、ダヴォスはきっと許さないから。

彼の選んだ王の選んだ女王がやったことについて彼がどう感じたのか、わたしは今そこが気になっている。

 

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