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不毛な三角関係「ホットラインマイアミ」キャラ語り04

「ホットラインマイアミ」キャラ語り、本日はみんな大好きマニー・パルド刑事とエヴァン・ライトについて!

1も2もネタバレにつき注意!

 

 

マニー・パルド刑事

ヤバい以外の感想が出てこないキャラである。

2章Homicide でいきなり単身マフィアを壊滅させ、おいおいいいのかと思っていたらやっぱり出口で警察に止められ、ですよねー……と思う間もなく「俺は警察だ」ときた。それまでの殺戮ぶりと、「仲間」の警官の前での普通っぷりのギャップに背筋が凍ったのを覚えている。

彼が恐ろしいのは、その社会性である。彼はジャケットくんのような無口な無職(たぶん)ではなく、ザ・ファンズのような無法者でもなく、一定の社会性を備えた公務員だという点だ。彼は周囲から信頼されているし、一定程度尊敬されてもいるようだ。

一切しゃべらないジャケットくんは確かに迫力があったが、ぺらぺらしゃべってすぐに信用されるパルド刑事にはそれとは別の恐怖を感じる。

考えてみると、あの長大な "Dead Ahead"(埠頭の章)では一夜でものすごい数のマフィアを殺しているわけで(しかも平行して連続殺人事件の方も起こしている)、一夜でのキル数を見ればジャケットくん以上ではないだろうか。

ちなみにわたしは "Dead Ahead" 最後のフロアでフリーズするという不幸に見舞われ、連続二回クリアすることになった。あれはなかなかの悪夢であった。

 

彼の動機は何だったのか。わたしは「目立ちたかったから」、そして何よりも「殺したかったから」以外にないのではないかと思っている。

確かに自分で事件を起こして自分で解決してみせれば出世につながるかもしれないが(アレックスの家でそれらしい細工をしていたし)、それはあくまで副次的なもので、やっぱり「殺したかった」が第一にくるように思う。

 

彼は自分こそが主人公になりたいと思っているタイプである。「主人公」だから危険を顧みずマフィアの巣窟にも突っ込むし、「主人公」だから死なない、のである。「主人公」だから理由なく殺人もする。ちょうど1をプレイした中に、ジャケットくんに対して「動機不明の殺人者」のレッテルを貼った人がいたことの逆である。「主人公」なら特に理由なく殺人をしても「物語は進行する」のである。

こう考えると、パルド刑事にとって殺人は「目的」ではなく「手段」だったのかもしれない。「殺したかったから」殺したのではなく「主人公になりたかったから」殺した。あるいは「主人公になる」という結果を得るための過程として殺人が必要だった。

そりゃ最初から主人公だったジャケットくん、そこから生まれたリチャードには「理解できない」と切って捨てられても仕方がない。

 

彼にとって最も憎い存在はジャケットくんなのだろう。世間の注目を一身に集め、しかしそんなことはどうでもいいと言わんばかりの態度のジャケットくん。パルド刑事の仕事を死ぬほど増やしたジャケットくん。メタ的には、一連の物語の真の主人公であるジャケットくん(わたしはマイアミ2についても、結局はジャケットくんをめぐる「脇役」たちの物語だと思っている)。

またリチャードの項でも語ったとおり、彼は「主人公」だから自分より上位の存在を求めない。だから彼の前にはリチャードが現れない。

「主人公」だからマスコミの注目も浴びるし、最後は疑われて警察から脱走する。主人公が不当な嫌疑をかけられて逃げ、自分で無実を証明する筋書きの映画やドラマなんていくらでもある。パルド刑事がやりたかったのはそれだと思われる。

追い詰められて自宅でドアにバリケードを作って飲んだくれるのも、そういうタイプの「主人公」を無意識のうちに演じていたのではないかとわたしは思ってしまう。

追い詰められた彼のところにかかってきた出勤要請の電話は、ひょっとして大統領暗殺に関するものだったのだろうか。

 

死体のそばに残したメッセージで、彼はしきりに "they" という単語を使う。「彼らにやらされている」とか「彼らを止めないと」とか。この「彼ら」というのは、「彼を主人公だと認めてくれない人々」のことではないかというのがわたしの暫定的な考えだ。

パルド刑事は自分を「主人公」だと思っているが、自分のことを「主人公」だと認めない、あるいは気づかない人が多いとも思っている。たとえばエヴァン・ライトとかである。あの野郎目の前にこんなにすごい「主人公」がいるってのになんでいつまでもジャケット一筋なんだよふざけんな。本当はエヴァンに自分を「主人公」だと認めてもらいたいパルド刑事という解釈も全然アリだと思う。

 

ちなみにパルド刑事はいったいどこからアッシュにたどりついたのだろうか。12月10日の被害者がジャック(ザ・ファンズが救出しようとした「妹」の「兄」、アッシュの友達)だとする説を見て納得した。

パルド刑事はジャックの妹から「お友達皆殺し事件」について聞き、その捜査をするうちに、マスクをかぶった自称自警団の存在を知る(というか妹ちゃんはザ・ファンズの誰かとは顔を合わせているから直接聞いたのか)。

自分以外に「主人公」になろうとしている連中の存在を、彼は許せない。しかもよりによってジャケットくんの模倣犯ときた。パルド刑事は彼らを「犯人役」とすることで、自分が「主人公」のドラマを成立させようとしたのだろう。

むしろザ・ファンズの連中を「犯人役」に仕立てるために、ジャックが被害者に選ばれたのかもしれない。不憫である。

 

 

エヴァン・ライト

マイアミ2の各パートをつなぐ重要キャラ。パルド刑事が「自分を主人公だと思ってる脇役」だとすると、エヴァンは「自分はただの脇役だと思いながら最も核心に近づいたキャラ」。

最初のステージでうっかり手が滑ってマフィアを殺してしまい、「事故」と言い張る彼には笑わせてもらった。しかし不殺主義とは難儀な……。こっちはショットガンでマフィアの内臓をぶちまけたいんですよお!

 

エヴァンはジャケットくんについて本を書こうとしていたが、彼の過去については調べなかったのだろうか。従軍経験があること、ハワイにいたことがわかれば、自分と会っていた可能性に思い至りそうなものだが。それともゴーストウルヴズの存在は秘匿されたりしているのだろうか?

もし彼があの写真のことを思い出していたら、そこに写るジャケットくんとビアードの笑顔を見なおしていたら、――うーん、それはそれでわかりやすい「動機」を見出すことになってしまい、結果として「50の祝福」の存在が見逃されることになっていたかもしれない。

 

ジャーナリストとしての彼には、きっとある程度の実力もあったに違いない。情報収集のためなら素手でマフィアの巣に乗り込んでボスのところまで話を聞きにいくし……。だからこそパルド刑事の殺人は「脇役」によるものだと看破し、ジャケットくんの事件を追い続けた。そしてかなり真相に近いところにまでたどり着いた。彼の成功がせめてあと半年早ければ、大統領暗殺も阻止できたかもしれない。

 

エヴァンに関して気になるのは、"Caught"  でパルド刑事の夢の中にいたことである。彼はマジックミラーらしきもののある部屋で、カセットテープに向かって何かを証言しているように見える。パルド刑事はエヴァンの証言によって犯行がバレた、という夢をみているということなのだろう。

これは二通りに解釈できる。

まずパルド刑事にとってエヴァンの証言は「裏切り」であるという解釈。エヴァンはこれまでにパルド刑事の違法行為をかばうような証言をしてきたことがあるのではないかと思われる(それがエヴァンの言う「貸し」にあたるのでは)が、それはバレても減給か、悪くてもクビになるくらいの違法行為だった。しかし連続殺人までは見逃せない! と考えたエヴァンがとうとうパルド刑事を売った……というシナリオの、パルド刑事の夢(ややこしい)。

もう一つは、やっとエヴァンがパルド刑事を「主人公」だと認めてくれたのだという解釈。ずっと連続殺人事件をスルーしてジャケットくんを追っていたエヴァンが、ついに自分のことを見てくれた。そのおかげで自分は注目され、「主人公」として逃亡を始めることができる……というシナリオの、パルド刑事の夢。まさに彼の思い描いていた「夢」ではないだろうか。わたしはこっちの解釈の方がパルド刑事らしいと思う。

いずれにしても、パルド刑事は自分の夢にエヴァンを登場させた。しかもエヴァンの証言している部屋には鍵がかかっており、パルド刑事は彼に手が出せない。パルド刑事にとってエヴァンはそういう存在なのだ。

パルド刑事→エヴァン→ジャケットくんという、あまりに不毛な三角関係。そりゃ奥さんも逃げますわ。

 

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