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ハイスピード子守アクションを堪能「ワイルドスピード アイスブレイク」感想

突然だが、わたしの住む町には4DXの映画を見られる施設がない(というかそもそも映画館が遠い)。4DXは楽しいらしいと話には聞いていたものの、これまで試す機会がなかった。

が、ついにゴールデンウィークに初体験してきた。ワイルドスピードの最新作で。

なにこれ楽しい。

あまりに楽しかったので感想を書き残したい。

なお「ワイルドスピード アイスブレイク Fast and Furious 8」のネタバレが含まれるが、このシリーズはネタバレされたからといって面白味が激減する類いの話ではない。こんなことを言うとファンに殴られそうだが、緻密に張り巡らされた伏線とかはレンチで叩きのめす勢いで、ストーリーとか特に把握してなくても圧倒的物量で楽しまされてしまう映画だ。

このブログで過去に扱ってきた作品と正反対をいく方向性かに思えたが、「トップギア」「グランドツアー」関連記事を大量に書いている時点で、わたしも本来こっち側の人間であることは自明の理である。

とはいえ新鮮な気持ちで映画を見に行きたい人には向かない記事なので、そういう方は映画を見たあとでまたおこしください。

 

 

 

 

4DXで映画を見る際の注意点

おそらくこんな注意は数年前から世に出回っていると思われるが、初めて体験してつくづく思ったのは、4DXで映画を見る際は、飲み物も食べ物も持ち込まない方が良いという点だ。さもなくば目からコーヒーを飲み、鼻でポップコーンを食べることになる。

また結構な勢いで水が飛んでくるので(実際は霧状なのでそれほどの水分量ではなさそうだが、それにしても)、ポップコーンは予告編の時点でしおれてしまう可能性がある。

ちなみにわたしの隣の席の家族連れは、鼻でポップコーンを食べていた。先見の明のない奴め。

 

もう一つは、込み入った話を理解するには向かないという点だ。幸い今回見た作品のストーリーは、

「来た

 見た

 勝った」

の三行でまとめられるような単純なわかりやすいストーリーだったため、そこまで問題にはならなかったが、あれだけガクガク揺さぶられながら緻密に張り巡らされた伏線を拾いあげるのは無理ゲーにもほどがある。同行者いわく、「複雑な話を4DXで見るなら二度目からにしろ」とのこと。なるほど。

 

ステイサム萌え

さて、映画館を出たわたしの最初の一声はこれだった。

ジェイソン・ステイサムといえば、強面でスーツが似合ってアウディで投げナイフで爆発な人というイメージだったのだが(おそらくあまりはずれてはいないはずだ!)、今作では子守プリンセスという新機軸。なんなのこれ。どういうコンセプトなの。

これまでにも娘を守るパパ役なステイサムは見たことがあった。少年を守る役も見たことがあった。しかし今回はガチの乳児の子守である。他人の子供の子守に命をかけるステイサムかっこいい、となってもいいところだったはずだが、なぜかこの件については萌えが勝った。

「なぜか」などと白々しく述べたが、理由は明白である。

デッカード赤ちゃんへの気配りが素晴らしすぎる。銃声が聞こえないようにヘッドホンでポップな音楽を流すところから始まり(あのヘッドホンやら音楽やら、デッカードくんは常に持ち歩いているのだろうか?)、「ちょっと待っててね」とかいちいち言うことがかわいいし、ベビーカーを抱えてのアクションは絵面が完璧きっと弟さんの子守もこんな調子でやってたんだろうなあと想像させる過保護ぶりである。

 

それとは別腹で、プリンセス・ステイサムとかいう新概念が強烈に叩き込まれた。「エクスペンダブルズ」シリーズも概ねラブコメという認識だったが、今作ではずいぶん体格差のあるお兄さんから激しくアプローチされるステイサムを見ることができた。

たまたま入った刑務所の独房のお向かいさんがステイサム、みたいなコテコテなラブコメの序章のようなオープニングに始まり、やたらとケツに言及され(でも年齢制限の低めな映画なので言い回しは割とお上品だった)、しまいにはプリンセス呼びである。何か違うジャンルの映画を見てしまったかと思ったぜ。いや、そんなわけないんだけど(爆発シーンを思い出しながら)。

 

ジェレミー・クラークソンの妄想具現化か?

トップギア」「グランドツアー」ファンとして感想を書くと、映画の予算ってすげー!! である。今作だけで「トップギア」の10シリーズ分くらいの車を破壊しなかったか?

かつて「トップギア」にロンドン五輪のオープニングセレモニーの監督さん(ダニー・ボイル)がゲストとして来た際(S16 アメリカSP)、司会者のジェレミー・クラークソンは「ぼくのかんがえたさいきょうのオープニングセレモニー」案を披露した。燃えるジャガー(と書いて「ばーにんぐじゃぎゅあ」と読む)でドリフトしながら聖火に点火とか、狂った話だったのを覚えている。

で、今回の「ワイルドスピード」に、まさに燃える車(あいにくジャガーではなかったが)でドリフトするシーンが出てきて、これってジェレミーの理想像じゃないかと興奮した。ジェレミーが映画を見たら、間違いなく立っちゃうわコレ。

車の「軽量化」のためにドアをはずしにかかるのも「トップギアで見たやつだ!」とテンションが上がった。スーパーレジェーラですなあ(棒)。

あの「雨」のシーンもアドレナリンがドバドバ出るやばさ(興奮に比例し、語彙力は低下する)。なおあの前後はあまりに座席が揺れたので、話をよく理解できていない。しかしそれでも特に問題はない(たぶん)。なんかデッカードが死んでた気がしたけど、あの映画館にいた誰一人として本当に死んだとは思ってないよね。

 

ところで前作のサブタイトルが「スカイミッション」、今作が「アイスブレイク」なのを見て思ったが、ワイルドスピードってネタをマリオカートから拾ってない? そのうち砂漠とかビーチとかジャングルとか溶岩コースとかで走り回ったりしない?(よく考えたら「トップギア」ではこれ全部やってるな……)

ともあれこのシリーズ自体、製作陣による「ぼくのかんがえたさいきょうのレースバトル」の具現化なのだから、それはそれで正しい姿かもしれない。もう全編通して「車をかっこよく撮る!」「車をかっこよく破壊する!」という情熱とエネルギーに溢れていて、そのためならニュートン力学を無視したり、登場人物が人間やめてたりするくらいは些細な問題だと思える。エンターテイメントは人をおおらかにするのである。わたしもなんだかパワーをもらえた気がする。

 

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