なぜ面白いのか

見たもの触れたものを保存しておく場所。映画、ドラマ、ゲーム、書籍の感想や考察。

狂気を煮詰めて浴びるように飲もう「ファーゴ」S2感想

「ファーゴ」S2がハラハラドキドキでとても面白かった。

もちろんこれは「ファーゴ」なので、単なるハラハラドキドキだけではなく、狂いに狂った世界観、徐々に狂っていく人々、徹底的にかみあわない歯車、そしてその狂った世界の中でほんのり救われる気持ちになる優しい家族が登場する。

このドラマを見る動機は「怖いもの見たさ」である。人間の狂気を煮詰めたものを浴びるように飲むのに近いものがある。怖いが、見たい。そんな悪趣味な人の希望を丁寧に丁寧に叶えてくれるのが「ファーゴ」シリーズだ。

S2はS1の過去話である。1979年が舞台だとか。ロナルド・レーガンのような実在の人物がちょいちょい出てくる。

で、S1でやたらとアピールされていたルーの過去の事件がメイン。S1でダイナーを経営する老ルーはすごく渋かっこよかったが、S2の若ルーがこれまたかっこいい。なおかつルーの義理の父親ハンクが、S1の老ルーを思わせる渋かっこよさで、たまらない魅力を醸し出している。S1のルーが好きだった人は、二重の意味で絶対に見るべき。そしてS2を見終えると、S1を見直したくなる。素晴らしい構成だ。

以下はネタバレあり感想。このドラマもネタバレしない状態で見た方が面白いと思われるが、ネタバレだけ見てもいったい何を言っているかわからない気もする。それくらい「ファーゴ」は狂ったドラマだし、その狂いっぷりを楽しむ作品だ。

 

 

 

初回からクライマックス

S1の第1話も日常から非日常へ全力でダイブする話だったが、1話の狂いっぷりという点に限っていえば、S2はS1の斜め上をいっている。

1話の主人公は、マフィアの三男のライ。見るからにダメそうな坊やである。彼がタイプライター屋とトラブって、検事と話をつけに行ったところ、軽くあしらわれたことに切れてワッフル屋の客と店員を皆殺しにする。

ここまでですでにだいぶ狂っているが、物語の導入部としてありえなくはない。S1の1話も主人公が殺っちゃう話だったしね、うんうん……と思っていたら。

謎のUFOが現れ、それに気を取られたライは車に轢かれて死亡。

え……ええ……(;;`゚Д゚) と、しばし呆気にとられた。

このわけのわからなさ、理不尽さこそ「ファーゴ」なのだと思い至ったときには、もうS2の世界にどっぷりはまっていた。最高の第1話である。

ちなみにスターチャンネルの公式サイトにはライのキャラ紹介欄があるが、そこには「ワッフル屋で3人を殺害した直後ペギーにはねられる」と書かれている。完全なネタバレだが、このネタバレだけを見てもひとつも意味がわからないと思う。

 

い つ か ら ?

このドラマを最後まで見てまず抱く感想は、なんといってもこれだ。いったいいつから彼らはこんなに狂っていたのか?

1. ペギーとエドの倫理観はいつからおかしくなっていたのか?

2. ペギーはいつから正気を失っていたのか?

3. ハンジーはいつからゲアハルト家を裏切っていたのか?

順番に考えてみたい。

 

1. ペギーとエドの倫理観はいつからおかしくなっていたのか?

残念ながら、最初からとしか思えない。

ライをはねた後、死体が車に刺さった状態で帰宅する時点でどう考えてもおかしい。ひき逃げってレベルじゃねーぞ!!(この時点でルーがパトロールしていたらこの話はここで終わっていたかもしれない)

また一見まともそうに見えたエドも、最初からおかしい。あの家の地下室は異常だ。あれはエドの親が買い集めた雑誌やがらくただそうだ。エドはそれを一切処分せず、あの積もり積もった「歴史」の上に、ペギーとの家庭を築こうとしていた。

持ち家にそのまま住んで妻を迎え入れるというだけなら、大して珍しい話ではない。だがあの地下室は、少なくともペギーを迎え入れる時点で何とかしておくべきものではないのか。

ペギーははじめから倫理的にヤバい人ではあったが、精神的におかしくなっていったのは、あの家の地下室の、いわば「呪い」のためでもあるのだろう。

 

2. ペギーはいつから正気を失っていたのか?

これは割と謎である。

ペギーは最初から倫理的にヤバかったが、幻覚を頻繁に見るほど破綻した人格には思えなかった。あの地下室でジェフリーを前にして、幻を相手にペラペラしゃべっていたシーンは、かなり恐怖を感じた。

彼女は薬物をやっていたことが示唆されていたから、ひょっとするとその影響があったのかもしれない。

S1のレスターのようにペギーとエドも報いを受ける形で死ぬのだろうと思ってはいたが、ペギーの受けた報いはある意味でそれより酷かった。あの映画があんな皮肉な形で結末への伏線になるなんて。やはりこれは「21世紀」の作品である。

 

3. ハンジーはいつからゲアハルト家を裏切っていたのか?

本編では、ジェフリーの「早くしろ、出来損ない。そいつらを撃ち殺して俺を病院へ」というセリフまではゲアハルト家の人間だったとされている。わたしも表面上はそのとおりだと思っている。

しかしそれ以前から割と不穏な空気は醸し出していた。口ばかり威勢のいい無能こと長男氏に対して、もともとあまり敬意のある態度には見えない。あの時点で「疲れて」しまっていたのかもしれない。いろいろなことに。

出落ちパパが健在だった頃は、ハンジーももっと生きることに前向きだったのだろうか。「出落ちパパのことは尊敬していたが、もうその人はいない」+「倒れた彼を目にして人生の無常を感じ、何もかも嫌になった」の合わせ技で裏切ったのかなあと、これは半分妄想だが、思っている。

しかしそれもこれも、最後のハンジー無双に持っていくための長い前フリでしかなかった。無能警察諸氏が非常に丁寧にフラグを積み上げるのも楽しかったが、そのフラグをこれまたきちんと回収してくれるハンジー、有能。長男氏は身の程を弁えてハンジーに助けを beg すべきだった。8話時点で beg しても手遅れだったとは思うが。

ハンジーに関しては、彼に注目しながら2周目にいきたい気もしている。それくらい彼は魅力的なキャラだった。というか、後半は彼が話を引っ張っていってくれていた。セリフはあまりないのに、存在感がすごい。

 

ソルヴァーソン家とマイク・ミリガンについてもまだ語りたいのだが、またの機会に。

 

ssayu.hatenablog.com