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未経験OKの魔法少女「十三機兵防衛圏」クリア後ネタバレ感想・2

昨日の続きで、本日も「十三機兵防衛圏」のキャラ語り。

緒方→冬坂→東雲→鞍部→網口→如月→三浦→薬師寺→鷹宮→関ケ原→南→比治山→郷登

というわたしがクリアした順で語っていくよ!

前回鞍部くんまで語ったので本日は網口くんからユキちゃんまで。

前回の記事はこちらから!

ssayu.hatenablog.com

エンディングまでのネタバレ注意!!

 

 

 

 

ビデオの内容が割とネタバレ

 

 

網口愁

網口くんは不思議な夢をみたりテレビの中のアイドルが語りかけてきたりと序盤からミステリー展開な割に、メンタルが安定しているのでプレイしやすかった。惚れっぽいキャラという自認のようだったけど、ユキちゃんひとすじなところも良い。

網口くんパートは最初から「井田」と名乗る自分という存在、因幡深雪が語りかけてくるという明確な謎が提示されて、それを追っていくという構造になってて、状況を把握しやすいのもありがたかった。

いや網口くんは結構お気に入りなんだよな。それだけに、一歩間違うと井田になるのが恐ろしい。

全体的にハイスペックで、状況に対して冷静に対処できて、しかも好きになった相手に一途で一生懸命という点で、網口くんも井田も共通している。

いったい何が網口くんと井田を分けたのだろうか。生まれ育った時代設定の違い? 如月との出会い方が悪かった? 生育環境の違い? うーん、それはひょっとしたらあるかもしれない。

最後のループの彼だけ、網口家に預けられてそこで育っている。網口家は富裕層ではあるようだが、両親は不仲らしい。父親は愛人のところに入り浸って家に帰ってこない。(なんでこんな設定の家庭に自分を預けた???)そんな父親の姿を見ているから、網口くんは不誠実な付き合い方はしたくないし、好きな人と結ばれたとしてもその裏で誰かが傷ついているみたいな状況に敏感だったりするのかな、みたいに想像した。

網口くんと井田のいちばんの違いってそこだよね。他人を利用して犠牲にすることを厭うか厭わないかの違い。

 

森村先生が井田に対して世界の真相を隠していたのが割と致命的だった気がする。井田は賢いし冷静なので、世界が今どういう状況なのかを知れば、現実世界で如月と本当の意味で結ばれるために死力を尽くしてくれたんじゃないのかな。

でも森村先生もこの世界が仮想現実だというところまでは辿り着いていなかったから、このふたりだけでは無理だったかなあ。森村先生がオリジナルの自分の不都合な情報を隠さなければ、ふたりで協力して世界の真相に近づけたような気もするんだよね。なにしろ和泉十郎はひとりで辿り着いたわけだから。

井田も井田で、森村先生と和泉十郎を引き離すようなことを言わなければ、もうちょっと全体的にイージーモードだった気がする。この話、周回記憶持ちキャラが全員協力できていたら、ここまで複雑にならなかったよね。和泉十郎が犯罪者扱いになったことでだいぶ難易度が上がってしまった。

 

網口くんは如月兎美と出会っても恋心が芽生えないのが面白い。先にユキちゃんと出会っていたからか? あるいは井田は如月のことを「動画配信サイトで歌っているある種のアイドル」として好きになったのかも。

仮想世界が復旧して、井田鉄矢と因幡深雪としてふたりが再会できたのはよかったな。彼らの人格はもうデータとしてのみ存在して現実世界に出てくることはないのだろうけど、あの世界で幸せになれたらいいと思う。なんだかんだで井田の恋心と執念がなければ、最終局面で因幡深雪のサポートもなかったわけで。

 

ところで小奈津ちゃんが南奈津乃の子どもの頃にそっくりと聞いて、鷹宮教授の別れた夫って井田!? と思ったのだが、鷹宮教授が「南家のことであなた(奈津乃)を苦しめたのは謝るわ」と言っていたので、別れた夫の名字が南ってことでいいのかな。よかった、遺伝子情報がこれ以上かぶるケースはなかったんだ。

過去のループの中で何回くらい東雲に殺されたんだろうな~。いやセクターが違うからほかのループの中では出会わなかったのかな~。

 

 

如月兎美

あの髪型はやはりウサギの耳モチーフなんだろうな、かわいい。歩き方も独特でかわいい。

因幡深雪がウサミちゃんのハンドルネームと結びついたときの盛り上がりがすごかった。

ウサミちゃんパートそのものは、2025年に飛ばされておろおろするのがメインだったわけだけども、いろいろなキャラのストーリーに出てきては重要な役割を担っていく。如月ドロイドも因幡深雪も含めて、物語をだいぶかきまわして面白くしてくれたキャラだ。

ウサミちゃんがこれだけ聡明で優しい子でなければ、結局最終局面で世界は救われなかったに違いない。そしてウサミちゃんの機兵があれだけ強力でなければ、世界はやはり守られなかったに違いない。長距離ミサイルは便利だし超大型ミサイルにも大変お世話になりました。

2周前の如月兎美は「動画配信者としての自分」を応援してくれた井田のことを好きになったけど、今回の如月兎美は緒方のどこが気に入ったんだろう? 自分が育った2020年代にはいないあのキャラクターが新鮮に映ったのはあると思う。それに加えて、なんだかんだで自分を守ろうと体をはって一生懸命になってくれるところが好きなのかな。

エピローグではあっさり緒方と結婚して子どもまでいるあたり、彼女もやっぱり好きになったら一途な感じっぽい。

因幡深雪が過去の自分だとわかってさらっと納得してしまうのはちょっと意外だったけど、そういうところも彼女らしい。

東雲先輩のストーリーを最初の方にクリアしてしまったので、以降は「誰が犯人か」「なぜ機兵汚染が起こったか」はわかった上でストーリーを追うことになったのだけど、先に犯人がわかっていたから網口くんやウサミちゃんのパートはだいぶすんなり理解できた気がする。

 

 

三浦慶太郎

いきなり2188年の情報が提示されてびっくりした思い出。

彼こそがこの作品の良心。彼が肉体的にも精神的にも健全すぎるくらいに健全だったおかげで、和泉十郎の計画も沖野司の計画もうまくいき、世界のデータは保存され、セクター4の人々とも再会がかなった。かつ、彼のまっすぐな家族愛が森村博士の中の「千尋」を生かした。どいつもこいつも私情をはさみまくるこの世界において、影のMVPと言ってもいいでしょこれは。ハンバァグもっと食え。

2188年に恋人同士だったと思われる奈津乃とは、セクターが異なるため本来は彼女と出会うことはなかったはず。これまでのループの中では何度も、奈津乃と出会わないまま終わった回があったに違いない。その場合は鞍部玉緒と結ばれたりしていたのだろうか。いや結ばれる前に世界が終わっていたかも。

たぶん2188年には奈津乃と直接対面でやりとりする機会はあまりなかったのではないかと想像する。それだけに、現実世界に生まれなおしたら今度こそしっかり触れ合って愛を育んでほしい。

ミウラと関ケ原の友情とか、BJと奈津乃の友情とかもSF的には大変おいしい。そこだけで一作品できそうなテーマがてんこもりなんだよな。

1985年の鞍部家の柱に傷がないことから、時間移動ではなく場所移動が起こっているだけなのでは? という仮定を決定づけてくれたのも彼のおかげ。

というかね、このゲーム、割と地の文(ミステリーファイル)に嘘が書いてあるのがちょっとアンフェアな気がしないでもない。ミステリーファイルってその時点で判明している「事実」ではなくて、「その時点ではキャラクターたちはこういうふうに世界を見ています」という解説なんだよな。あとセクター移動の際に時計が巻き戻ったりする演出をはさむけど、あれもミステリーとして見ればアンフェアじゃないか?

 

 

薬師寺

このゲームのヒロイン。

キャラごとにお話のジャンルまで変わるのがこのゲームの特徴ではあるが、SF作品をプレイしていたと思ったら魔法少女ものが始まるとは思わなかったぜ。

やっぱりベースにあるのはまどマギなのかな。猫と契約して魔法少女になる薬師寺はもちろん、ロボットものなのにロボットを起動するのが最後の最後のシーンという全体の構成がすごくまどマギっぽい気がした。「追想編」という物語の体裁をうまく使った盛り上げ方だよね。

和泉十郎と薬師寺は半年くらいセクター3で一緒に過ごしてその間に恋人関係になったようだが、その部分の描写がほとんどないので、最初は薬師寺が十郎に執着する理由がわからず混乱した。序盤は和泉十郎と森村千尋カップルだったような描写も出てくるし、その和泉十郎とこの和泉十郎は別人だということもまだわかっていないし。

瑛くんとイオリちゃんもオリジナルでは暗殺者と被害者だったカップルだが、よく考えてみると十郎と恵ちゃんも殺し殺された経験のあるカップルだ。どちらも相手に個人的怨恨があっての殺害ではなかったけれども。東雲先輩とはそこが違うぜ。

恵ちゃんだけほかの同級生女子との絡みが薄いのだが、彼女は魔法の銃でみんなを撃ってまわる役回りなので仕方ない。ウサミちゃんとの絡みはもっと見たかったな。

和泉十郎も彼女にもう少しちゃんと説明していれば、あんなに罪悪感に見舞われずにすんだのではないかという気もする。でも全部を説明したとして、彼女がそれをすんなり信じられたか、信じられたとしても同じ結果になったかはわからない。

ともかく彼女はやりとげて、世界は救われた。あとは十郎と幸せになってくれ。いやしっぽは「未経験OKの簡単なお仕事」と言っていたけども、普通に大変なお仕事だからな??? よくやりとげたよ。

そういえば、オリジナルの恵ちゃんはオリジナルの十郎に命を救われている。そのふたりが同じ年齢に生まれて守り守られる関係になり、こうして結ばれるわけだ。オリジナル十郎は森村博士と愛し合っていたはずだが、この結末をどう思うだろうか。少なくとも森村博士は彼らを邪魔しようとはしていない。オリジナル恵ちゃんの父親も、オリジナル恵ちゃんは結局亡くなってしまったとしても、そのクローンが幸せになっていることで少しは浮かばれたかもしれない。

 

ところでしっぽ(と芝くんと和泉十郎)の声優さんが上田耀司さんだと知った。「ゲームオブスローンズ」のリトルフィンガー役の人じゃないの。暗躍キャラが似合う声ということか。これはもう一度聴きなおさねば。

 

 

鷹宮由貴

わかりやすいキャラクターにわかりやすい探偵もの形式のストーリー、好き!

ユキちゃんはなっちゃんとの友情があってこそストーリーが成り立っていて、このふたりの友情が本当にストレートに素敵だった。

専用モーションまである! ありがとう!!!

ポニーテールに黒いロングスカートのユキちゃんと、短髪ブルマ生足のなっちゃん、いい感じに対になっていて、こうしてハグしたときに映えるのだ。良いキャラデザ。

ストーリーの仕立てはわかりやすいのだが、探偵もの形式でいろんなキャラクターのいろんな謎に少しずつ絡んでいくのでかなり複雑だった。まず相葉絵理花の顔が鞍部玉緒だということに気づいてとんでもなく驚き、さらにその中身が和泉十郎だと気づいてさらに驚き、あの和泉十郎が「ワトソン役です」とか言ってあんなボケボケな言動をしてたのかと思うと、森村千尋に見せたいなあと思ってしまうのだった。

それからユキちゃん視点で出会う網口くんは、うざがらみしてくるやつでありながら、なかなかにかっこよく頼りになるキャラクターで、このカップルも素直に応援したくなった。

実際のところ、たったひとりの家族である父親が刑務所に入ってしまった状態で、その父親を人質として脅されて謎の機関の構成員にさせられて、慣れない環境に放り込まれて幼馴染と再会を果たしたもののその幼馴染には秘密がありそれを調べなければならないという状況って相当心細かったはず。

そこに現れた網口くんはやっぱりこう、彼女にとって心の支えになり得る存在だったのではないかな。普通の人なら網口くんに頼りきってしまいそうな状況で、そうならないのはやっぱりユキちゃんが強い子だということなのだろうけど。で、網口くんも彼女のそんなところを含めて好きになったんだろうな。

ただしユキちゃんから見た井田は普通にイヤな大人だし完全な悪役だ。面白いキャラ配置。

しかしオリジナルの鷹宮教授と南奈津乃が親子だったことを考えると、このふたりが同じセクターで幼馴染として育つ設定にしたのはやっぱり私情入りまくりだよなーと思ったり。三浦くんも同じセクターに入れてやれよ!! いや第二次大戦期とかいう過酷な時代を望んだのは三浦くん本人だが……。

セクター3で暮らす彼女はもともと鈴ヶ峰女子高等学校に在籍していたようで、彼女の制服もそちらの学校のものらしい。この名前を聞いてびっくりしてしまった。鈴峯(すずがみね)女子高等学校って実在するよね(調べたところ現在はほかの学校と合併して名前が変わっているらしい)。比治山も東雲も鈴峯も広島の地名(しかも全部教育機関と縁のある場所)なのって、何か意図があったりするのだろうか。

 

 

 

 

そんな感じで、今日はここまで。

書きながらいろんなネタバレ考察も読んでいるので時間がかかるぜ。

このゲーム、どんな順番でクリアしたかによってキャラの印象もお話の印象も変わったりするから、ほかの人の感想が面白いのだ。

 

 

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