なぜ面白いのか

見たもの触れたものを保存しておく場所。映画、ドラマ、ゲーム、書籍の感想や考察。

東条斬美と絡新婦「ニューダンガンロンパV3」キャラ語り08

ダンガンロンパ霧切」の新刊がもうすぐ発売。楽しみなのだが、いつ結お姉さまが死んでしまうのかと思うと……いや、このシリーズの読者はなんだかんだでそのときがくるのを楽しみに待っているはずだ。

 

本日は「超高校級のメイド」東条斬美さんのキャラ語り。彼女もいろいろな切り口から深読みできるキャラなので、今日はその一端を。

エンディングまでのネタバレ注意。

 

 

 

 

 

 

内閣総理大臣代行

斬美さんはシリーズをとおして最もファンタジーというかぶっとんだというか、現実味のない「設定」を与えられたキャラである。斬美さんに比べれば、キーボくんの方がまだ現実的だ。ロンパ世界だからなんでもありなのかと、2章時点では飲み込まされてしまったが。

しかし彼女には実際に、国を動かすだけの実力は備わっているのだろう。語学スキルは百田くんや天海くんと並ぶレベル、歴史や政治経済の知識に加えて、メイドとしてアッパークラスの人々に仕えるなかで、人的コネクションも広げたに違いない。彼女は休むことを嫌うのだが、むしろ休憩時間はきちんと確保した上で自己研鑽に励んでいたのではないかと思われる。

 

わたしは「ダウントンアビー」が好きなので「アッパークラスに仕えつつ何でもできるメイド」という存在には違和感バリバリなのだが(大きな家では仕事は細分化する。一人で何でもやるのは中流家庭に仕えるメイド)、斬美さんは仕える相手を何度か変えているようだし、オールラウンダーを目指しているのだろうと思うことにする。

育成計画モードの希望ヶ峰学園は花村くんと斬美さんの二人が学食で働いており、学生の食生活がうらやましくて仕方ない。自炊スキルが身につきそうにないこと以外は、理想的な環境である。

 

蜘蛛の糸

斬美さんのキャラクターデザインでわたしの目を引いたのは、蜘蛛のモチーフである。

メイド+蜘蛛+石川五エ門東條英機=東条斬美 である。

ここでは蜘蛛モチーフについて語ってみたい。

 

メイドさんという、他人をサポートする立場の人間が身につけるには、蜘蛛モチーフはやや攻撃的である。このミスマッチなデザインをあえて持ってきたのには、それなりに理由があると思われる。

蜘蛛といえば、周到に罠を張って餌を待ちかまえ、引っ掛かって動けなくなった獲物を食べてしまう狡猾な生き物のイメージ。心理学でも「束縛」や「陰湿さ」を象徴するもので、特にそういった女性を表す生き物とされる。「蜘蛛は家を守る」イメージから、女性性を持つようになったのだろう。真宮寺くんなら、ここで蜘蛛にまつわる民間伝承をペラペラ語ってくれるはず。日本には絡新婦と書いてジョロウグモと読む妖怪もいることだし。

むしろ斬美さんのキャラデザインを見て、真っ先に京極夏彦の『絡新婦の理』を思い出し、こいつ黒幕じゃね? と思ったファンは少なからずいるのではないだろうか。ロンパのファン層的に考えて。斬美さんファンにはぜひ読んでもらいたい。ちょっと分厚いけど気にすんな。

 

「高いところに罠を張り、動けなくしてから殺す」「糸を使って移動する」と書くと、斬美さんの殺害スタイルも蜘蛛モチーフを思わせる。

高いところ=2階

動けなくして=手錠(=蜘蛛の糸の暗喩)

糸を使って移動=ロープ

というわけだ。

ところで体育館ープールー星くんの研究教室は、最初から殺人のトリックに使われることを想定した配置だと思っている。あの「通り道」だけ窓が開くのは不自然だし、そもそも外に通じているわけでもない窓が存在すること自体が不自然だ。あの配置全体が、主催者側の用意した罠だったと考えると、蜘蛛であるはずの斬美さんが蜘蛛の巣に絡めとられた感があって、主催側の用意した彼女の衣装とおしおきと合わせて考えると、最高に悪趣味で、狛枝顔になってゾクゾクしちゃっても仕方ないねこりゃ。

また彼女があの動機という罠に絡めとられて身動きできなくなってしまったことを考えても、「主に仕えるという形をとることで自らの能力を縛る」というキャラ設定を考えても、「束縛」のモチーフもばっちり投入されている。

それこそ真宮寺くんを見習って、世界各地の蜘蛛にまつわる民話や伝承を集めてみると、斬美さんのエピソードの元ネタをさらに発見できるかもしれない。

 

ssayu.hatenablog.com