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一人称視点ゲームにおけるプレイヤーの視線と意識「サイバーパンク2077」感想・2

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フォトモードを覚えました

サイバーパンク2077」、いやすごいなこのゲーム。

歩き回って風景をスキャンして物を拾って出会ったNPCの話を聞いているだけでも無限に時間が過ぎていくのだが、ストーリーが進み始めてますますのめりこんでいる。

この世界で「何が可能なのか」を序盤である程度示してからの怒涛の展開に、「そうか、これは起こり得るな」「そうなるとこれもあり得るな」と納得しつつ、驚き、焦り、動揺し悲しむという情緒不安定なプレイヤーになってしまっている。

豊富な会話選択肢は「このVくんはこういうキャラ」という自分の中のイメージに従って選んでいるのだが、話が進むほど自分のイメージするキャラが固まっていくのもすごい。

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高級ホテルのロビーで記念撮影してしまうVくん

NPCたちが交わしている会話も、足を止めて聞いているととんでもないことを言っていたりする。面白いので延々と話を聞き続けてしまう。ごめんよジャッキー、散々待たせて……。

わたしは一人称視点のゲームに苦手意識があったのだが(自分の操作しているキャラを見ていたいタイプ)、今作は一人称視点ならではの演出が随所に見られ、これはこれでアリだなあと思い始めた。

特に重要なイベントシーンで、自分の意思で視線を動かせることに感動した。Vくんのいる場所からは移動できないため「カメラ移動」ができるわけではなく、あくまで「Vくんの視線」を動かすことしかできないのだが、「このときVくんが何を見ていたか」「何に注目していたのか」を決めることができるというのは、大げさに言えば究極の意思決定である。ある意味で、会話における選択肢以上にこの「視線の決定権」というのはこのゲームにとって重要なのではないかと思い始めた。

よく言われる「作品への没入感」を形成する要素のひとつは、間違いなくこれだ。

 

そんな感じで以下ネタバレあり。前回「せめてキアヌ・リーブスに会うところくらいまでは頑張りたい」と書いていたが、その目標はクリアした。キアヌ・リーブスに会った後くらいまでのネタバレあり!

 

 

 

 

<Relic>回収ミッション

前回<Relic>の回収を依頼され、下準備に走り回ったVくん。どうにか必要な機材と情報を手に入れ、いよいよヨリノブの滞在するホテルへ潜入!

その前にデクスとの最終打ち合わせがあったのだが。

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報酬は30%だという話に不満を漏らすジャッキー。それに対して報酬は重要ではないと諭すVくん。「なら何が重要なのか」という問いに出てきたこの選択肢。

あーそうか、このVくんはアラサカ社に個人的な恨みがあるよね。散々使われてきたのに銀行口座凍結とかひどいよね。仕事で名をあげると同時にちょっと胸がすっとするといいなと思ってたよね。

というわけでうちのVくんはやや私怨まじりでこの仕事をやっていることになった。

デクスの手配してくれた自動運転の車(正確にはAIカー?)は大変高性能だった。

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このときは笑ってスクショ撮ったんだよ…

いやお前サービス充実しすぎだろ! どんだけ亡くなるお客様多いんだよ! ミッション前に縁起でもないこと言うな!

と思ってたんだよ、このときは。まさかこれがフラグだったとは……。いやどう見てもフラグだな、今思い返すと。

 

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これは潜入先の高級ホテルのバー。なんかシャンパンを大量に並べてる人がいる! と思って近づいたら、ヤバい会話してた。

この男性は酒に薬を混ぜられたようだが、その薬とは「感覚が3倍になってしまう」ものらしい。

「これは楽しめそうだな」とむしろ嬉しそうな男性。しかし女性は「痛みが3倍になるのよ」と説明している。「今夜は楽しめそうね、後で部屋に行くわ」と言って話が終わったが、この人たち今夜何をするんですか。生きてホテルを出られるといいね、おじさん。

同じバーで、潜入用の設定にちょろっと使われたタキ氏もいた。こっちも核がどうとか何やらヤバそうな会話をしていたが、今後彼が話に絡むことはあるのだろうか。

そんな感じで延々と話を盗み聞き(堂々と相手の前に立っていたので「盗み聞き」ではないかもしれない)していたため、ジャッキーを部屋の前で延々と待たせてしまった。先に部屋でくつろいでくれてよかったのに、ごめんよ。

 

サブロウ・出オチオブザイヤー・アラサカ

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大物キタコレ→死んだーーー!? って焦ってるVくん。

一人称視点すげーな! って思った最初の場面がここ。いったい何が起こっているのか、自分の意思で視点を決めなければいけない。

Vくんは隠れ場所から動けないため、「カメラ」をここから動かすことはできないというのも実はポイント。別の角度からも見たい欲求は高まるのだが、「動いてはいけない」という差し迫った危機感も同時にある。この二律背反と不自由さがゲームとして楽しく、またリアルである。

しかしヨリノブ・アラサカは父親と仲が良くなさそうではあったが、いきなり殺害とはどういうことだろうか。<Relic>を盗んだこととも関係している? というか<Relic>を盗んだのも父親をホテルへ呼び出すためだったりする? サブロウは毒殺されたことにしようとしていたが、そんな話が通るんだろうか。検死とかないんだろうか。お金と立場でもみ消せるのかな。計画殺人だったらもうちょっと周到に準備しておけばよさそうなものなのだが。

で、そこからのこの展開。

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すみやかなフラグ回収だな……。

もうね、相棒の離脱とか全然考えてなかったから……。悲しい……メジャーでまた会おう、と言って別れた。遺体はご家族のところに搬送してもらった。後で母親から電話がかかってきて、葬儀に招かれたので行ってこようと思う。

そして案の定、サブロウ暗殺の犯人に仕立て上げられてしまうVくん。なんかごく最近も要人暗殺の濡れ衣を着せられるゲームをやったことある気がするな! あのときはしばらく国外の友人を頼ってそちらに身を寄せたものだが、Vくんの世界はナイトシティがすべてだ。いったいどうなってしまうのか。

 

ジョニー登場

とんでもない事件に発展した状態で帰ってきたVくんはデクスに始末されかけるわけだが(まあこれは「裏切り」というか彼の立場でこの展開なら仕方ないかなという気もする)、その瞬間に意識がジョニーの方へ飛ぶ。きた! キアヌ・リーブスきた!

一人称視点なので、最初は自分の体がどうなっているのかわからない。だがそこでちゃんと鏡を用意していてくれるお約束

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わお~鏡にキアヌ・リーブスが映ってる!

彼、ジョニー・シルヴァーハンドはミュージシャンだという話を聞いていたのだが、ライブをちょっとやったと思ったら引退? してヘリコプターに乗り込み、そのままアラサカ社の爆破に向かうことになった。マジかよ。この人テロリストなのか。

プレイヤーはすでにブレインダンスを経験しているため、「これはあれと同じ現象か」とすぐに順応できる。このへんの見せ方の手順も大事だし、この作品はそういうところが丁寧だ。

しかしブレインダンスを経験しているおかげで、それとの違いがそのまま<Relic>の特殊性だということも理解できる。あのときは寝台に乗せられて機械を取り付けられた上でのことだったが、今回は「死」によって自動的に発動したように見えた。

 

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電光掲示板に映る2023の文字。たぶんまだVくんは生まれていない。

ここからいきなり戦闘に入るわけだが、相変わらずエイムがダメなのでダメなテロリストになってしまうジョニー。とはいえここでは残弾数を考えずに撃ちまくればいいみたいだったので、気長に取り組んだ。

 

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監視カメラを見つけたので試しに撃ってみたら、煙をあげて壊れた。マジでか。たぶんこれ、ここでのゲームの進行には何の影響もないのだけど、こういう作りこみは本当にすごいな。「ここで特に意味もなく監視カメラを撃ってみたいと思う人」のためだけにこんなふうに作ってあるわけで。

 

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よくわからないハッキング用デバイスが旧式だー! 2077年なら手から直接コードをつないで接続するところだよねこれ。

 

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わたしがこのゲームをやっていて「巧いな~」と思うところのひとつはこれ。ちょいちょい発生する「アップロード待ち」時間に会話やちょっとしたイベントがはさまれる。このときは部屋のテレビでニュースが流れていて、まさにこのアラサカ社襲撃事件について報道されているのを見ることができた。

これも「テレビの音声がどこかから聞こえるな」と思った「わたし」が視線を動かしてテレビを発見したからこその場面だ。テレビ画面を「見せられている」わけではない。

ウイルスアップロード中のジョニー(というかVくん?)に発生する数秒の手持無沙汰時間を利用したこういう演出が、毎回面白いしプレイヤーをだれさせない。本当にどの瞬間も油断できないゲームだ。

 

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さっき死んでた人がこういうこと言うの、気が利いてるよね

結局ジョニーは捕まって死んでしまう。彼が死んだところで意識はVくんに戻ってくるわけだ。

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そのときのこの世界はいったい何だったんだろう。

 

帰ってきたVくん

そこからもまた怒涛の展開で、正直まだあまり飲み込めていない。Vくんは廃棄物処理場に捨てられており、デクスに発見・回収されたがそのデクスは射殺されてしまった。お前、大物みたいな雰囲気だったのにあっさりだったな……。

射殺したのはタケムラさん。ええと……サブロウ氏の護衛の人だったっけ……(キャラ名を覚えられない)?

彼はVくんがサブロウ暗殺の犯人ではないとわかっていて、かつ彼が<Relic>の持ち主だと知っていて、Vくんを助けたということかな。

しばらくイベントシーンだな! と思ってビールを飲んでいたわたしは、カーチェイスからの銃撃戦で慌ててビールをこぼしかけた。このゲーム、イベントシーンから戦闘がシームレスだから本当に気を抜いたらダメだな! いつビールを飲めばいいんだ???

「俺に任せろ」とかっこよく銃を抜いたVくんだが、例によって全然命中せず、言動がちぐはぐすぎて embarrassing である。

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スクショヘタクソ選手権

幸いにも追手は自損事故で倒れてくれたので、ふたりはなんとか生き延びることができた。これ、アクション下手のための救済措置なのか? イージーモードだからなのか? よくわからないけど助かった。

タケムラさんと名医すぎるヴィクのおかげでどうにか命をとりとめたVくん。しかしここで衝撃的なことを告げられてしまう。あの<Relic>は、宿主の意識を乗っ取ってしまうものらしい。ウイルスじゃん!?

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待って何それこわい。これってそういう話だったのか。

ジョニー視点のときは「ジョニーの体をVくんの意識が乗っ取っている」状態だから、これからまさにそれを逆転した状態になるということだよね。ただあの「ジョニー」は<Relic>に記録された「情報」としての「ジョニー」だから、「ジョニー本人」の意識を乗っ取っているわけではない。だからジョニーとVくんの関係は対称とはいえない。

Vくんの意識を「記録されたジョニーの情報」で上書きされるということになるのか。ブレインダンスが可能なら、それもたぶん可能だよな、とは思っていた。だけどまさか本当にそんなことになるなんて。

物語構造的に面白いのは、Vくんの意識はゲーム開始時点で「プレイヤーに乗っ取られている」ということもできる点だ。そして「Vくんの意識が乗っ取られる」ということは、「プレイヤーの意思がゲームに上書きされる」ということになる。

これは「ゲームのプレイヤー」にとってなかなかの恐怖体験だ。特に、自身の個性をVくんの選択に反映させるタイプのプレイヤーにとっては。また一人称視点であるからこそ「プレイヤーの意識」はVくんと同化しがちで、さらに恐怖を煽られる。ここまでこのゲームで「視線を意のままに動かせる」ことの面白さを刷り込まれてきた分、「視点を乗っ取られる」ということにも恐怖を感じる。

めちゃくちゃ面白いテーマな上に、めちゃくちゃ面白いアプローチじゃないか。これから先の展開が楽しみすぎる。

 

そんなワクワクのプレイヤーと絶望のVくんの前に、新着メールが届いていた。

ホテルで死闘を演じ、相棒を失い、死から蘇った我らがプロタゴニストに届けられたメッセージとは何か。

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ええ……

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エロスパムメールじゃねーか!

「現実」ってそんなもんだよな、うん……。

これ家賃を振り込まなかったら家を追い出されるとかある? 今のところ振り込み方がわからないし、お金もあんまりない。大丈夫かな。

 

愛車

リモコンで呼ぶと自動で来てくれるVくんの愛車だが、先日足場の悪いところで呼んだところ、コンテナに突っ込んだあげく金網を突き破って転落し、大破してしまった。

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トップギアでこういうの見たことある

ドアもはずれてしまい、無残な姿になった愛車に泣いたものである。

しかし<Relic>回収ミッションから生還すると、なんと愛車が修理されて駐車場に届けられていた。よかった~! と乗り込んだ瞬間、ほかの車が突っ込んできた。

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ちょ……

悲しい。ひどい。なんでこんなことに。

しかも突っ込んできたのは、あのAI運転手デラマンだという。きみ、銃撃戦の中でも安全運転だったじゃないの。なんで事故ったの??? こっちは停車中だったのに???

デラマンが補償をしてくれるというので彼の会社に向かうことになったが、会社は1.5km離れたところにある。車はない。ファストトラベルもまだ設定されていない場所だ。そして肉体レベルが相変わらず3のままのもやしVくんは、どうやら他人の車の強奪ができないらしい。なんということだ。

1.5kmとぼとぼ歩くVくんである。ああ、見上げる空が青い。

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歩いていると、さまざまな情報屋が車を買わないかとメールを送ってくる。待ってくれそんな金はないんだ。あとジャッキーとの思い出が詰まったあの車も簡単には手放せない。

デラマンの会社に行くと、どうやらAI車の暴走は何件か発生しているらしい。発見して回収するという依頼を受けることになった。いやそれはともかくとりあえず車を修理してください!!! 時間がたてば修理されるんだろうか。

当面は徒歩移動でミッションをこなすことになりそうだ。タケムラさん、悪いけど相当待ってもらうことになるぞ。

 

話が動き出し、このゲームが「なぜ面白いのか」も少しずつわかってきた。続きが気になる! 早く冬休みにな~れ。

 

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