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タロットカードの謎を解く「サイバーパンク2077」考察・前編

※この記事は最初から最後までネタバレを含みます※

 

 

 

 

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一枚一枚のデザインがとっても「サイバーパンク

星エンドに続き、太陽エンドと節制エンドを見た。

どれもなるほどなーと思いつつ見たが、自分としてはやはり「わたしの見てきたVくん」にとって納得感があるのは星エンドだった。きっと人によって見てきたサブクエストも思い入れのあるサブキャラも異なるだろうし、その人ごとに納得のいくエンドがあるのだと思う。

悪魔エンドについてはわたしの今のセーブデータではどうやら完全版を見ることは不可能なようなので、もう少しパッチが来た頃に二周目で見てみたい。

で、今日は前回の記事で触れたようにエンディング後に改めてタロットカードの場所をまわり、その意味を考察してみたい。

わたしは紺碧ホテルでのクエストが終わってすぐに、まずすべてのタロットカードを集めてまわった。そのためそれぞれの場所にどういう意味があるのかわからないままだった。今改めてその場所を訪れると、そこにそのカードがある意味が理解できる。またそのカードが作中の何を象徴していたのかも見えてくる。

軽くぐぐったところまだタロットカードの意味を考察した記事はなさそうだったので(英語記事ならあるだろと思って探したけど簡単なものしか見つからなかった。世界最速かもしれない)、まとめてみることにした。

ストーリー全体にわたってネタバレしているので、プレイ途中の方は引き返すの推奨。

あとわたしが自分のたどったルートの中で見ていないものについては語ることができない。後々加筆修正する可能性があることをご承知いただきたい。

わたしがタロットカードを集めるクエスト「丘の上の愚者」をクリアした時点での記事はこちら。

ssayu.hatenablog.com

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やたらスカートをはく機会の多かったうちのVくん

よろしいか?

 

 

 

壁画を見せているのは <Relic>

考察の前提として、タロットの壁画を見せているのは <Relic> であり、Vくんとジョニー以外の人間には見えていないということは確認しておく。クエストが始まるのもVくんの中にジョニーが入ってきた後である。

 

タロットカードのバージョン

タロットカードにはさまざまなバージョンがあり、それによってアルカナの順番も異なったりするが、「サイバーパンク」では8番目が力で、11番目が正義のカードのため、ウェイト版がメインのようである。図柄もウェイト版を参照したと思われる部分が多い。

 

0. 愚者

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犬を連れ杖を持ち、前を見ているのに足元がないことに気づいていない「愚者」。

ミスティが言うには、これはVくんとジョニーを表している。ジョニーはむしろ別のカードのような気もするが、「愚者」が象徴する「自由、可能性」、逆位置での「愚行、夢想」はジョニーについてもあてはまると言えそうだ。

このカードがあるのはVくんの自宅ドア横。個人的には、このカードが象徴しているのはジョニーと出会う前の、ジャッキーと一緒に「メジャーリーガー」を目指していた頃のVくんではないかと思う。犬は信頼できる相棒のジャッキー、杖は男根の象徴だから銃とかかな。で、目の前にある危険(=アラサカ、あるいは相棒を失うこと)に気づいていない状態。

ゲームを始めて最初の時点でとるトロフィータイトルも「愚者」(傭兵になる)である。

 

1. 魔術師

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∞のマークをつけ杖を持ち(よく見えないがたぶんステッキ的なものを持っている?)、机の上には剣、コイン、カップを並べた魔術師。杖、剣、コイン、カップは小アルカナのスートである。

このカードがあるのはリジーズバーのすぐ近く。

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ここから振り返るとリジーズバー

ジーズバーの近くにあるということは、「魔術師」とはエヴリンか? とも思ったが、むしろジュディだろう。「魔術師」が象徴する「創造、才能」はジュディにぴったりだ。「観客」を前提とするマジシャンであるという点も、ブレインダンスという「視聴者」を前提とする媒体を作り出すジュディにあてはまる。「知性と意志をもって環境に適応する力」というのも彼女らしい。わたしのたどったルートでは、彼女は最終的にナイトシティを出て各地を放浪し、そちらでの生活を満喫しているようである。

何よりも、この服装はジュディだ。胸が開いた、へそ上までのタンクトップには見覚えがある。

 

2. 女教皇

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この白い衣装は一見してハナコだとわかる。ハナコと話すのがトロフィー「女教皇」の条件でもある。

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ですよねー

カードがあったのは、ヘイウッドのビスタ・デル・レイにある廃墟。タケムラさんがハナコを匿った場所である。ちなみに今回再訪したら、まだ中を調査していたアラサカのエージェントに発砲された。

「女教皇」が象徴するのは「知性、秘密、神秘」など。まあ大体ハナコの人物像と一致しているかな。ただわたしはまだ悪魔エンドを見ていないので、最後に彼女の提案にのったらどうなるのかはわからない。

 

3. 女帝

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錫杖のかわりに剣を持った、長い髪の「女帝」。ゲーム内でのカードの説明が、まさにローグのことを指している。太陽エンドの途中でローグが子持ちだったことが判明したのは驚いたが、これで「母性」要素も完璧だ。

カードがあるのはアフターライフ前なのでこれはもう疑う余地なし。

このほかに女帝が象徴するものの中でローグにあてはまりそうなのは、「繁栄、愛情、情熱」、逆位置での「挫折」くらいだろうか。

ジョニー亡き後のローグがコーポと通じていたというのは、なかなかにショッキングだった。だが彼女としてはそれは生き延びるための手段であると同時に、いつか反旗を翻すために機をうかがっていたということでもあるんだな。本当にその機会があるかどうか、自分でも信じきれていなかったようだが。おかげで太陽エンド・節制エンドのVくんもしくはジョニーは「復活」を遂げることができた。

生き延びた自分に対する疑問と悔恨を抱き続けていたローグは、あの場で「ジョニーのために戦って死ぬ」ことに納得していただろうとは思う。だがあの後ジョニーが復活した場合、そこにもう彼女がいないことが悲しい。今度はジョニーが、ローグのいない世界を生きることになるのか。ナイトシティを離れるエンドも納得である。

 

4. 皇帝

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f:id:ssayu:20210110160727j:plain こっちはマルセイユ版。

マルセイユ版タロットカードと同じく左向き(内面、過去志向)で玉座についた「皇帝」。いやあ禍々しい。

グラフィティがあったのは紺碧ホテル入口横。

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直前に廃墟で撃たれたせいで体力が減っている

「皇帝」はサブロウかヨリノブか迷ったが、ここはやはりサブロウだろう。「男性支配、権威、権力」全部が、作中で語られるサブロウの人物像と一致する。直接話す機会はほとんどなかったが。

またこの構図からは、支配者の孤独のようなものも感じられる。

サブロウが何を目指して <Relic> を開発していたのか、詳しいことは作中で語られなかった。結局、自身の「永遠の命」のためだったのだろうか。自分が永遠にアラサカを支配することが「家族」のためだということだったのかな。

 

5. 教皇

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3つの十字架と、法の番人であることを示す鍵を持つ「教皇」。

ゲーム内での説明を読むと、タケムラさんのことかな? と思われる。ただタケムラさんはむしろ別のカードのような気がする。

このカードがあるのはジャパンタウンの埠頭近く、タケムラさんとオダと会う場所である。もしかしたら「教皇」はオダかもしれない。「教皇」のカードが象徴する「信頼、尊敬、法の遵守」あたりは、タケムラでもオダでもあてはまりそうだ。

オダはサブキャラとしても(わたしのたどったルートでは)出番が少ないのだが(とはいえ強かったからインパクトはあった)、なんといっても「女教皇ハナコ」と対の存在であることから、やはりここではオダ説を推しておきたい。

 

6. 恋人

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描かれているのはふたりで、片側に蛇、もう片側に生命の木が描かれていることから、ウェイト版タロットをもとにデザインされていることがわかる。

Vくんとジョニーのバディを表すカードは、愚者よりもむしろこちらではないだろうか。<Relic> を盗むときにとれるトロフィータイトルも「恋人」なことだし。

「恋人」のカードはそのまま恋愛的な感情の揺れ動きも意味するが、「共感、深い結びつき、絆や縁」など二者間での関係性を示すものである。ゲーム内での説明は、まさにVくんとジョニーの関係性のようだ。「内面でぶつかりあう矛盾や、両極の間で調和を見出そうとする苦難」なんてまさにあのふたりの関係性のことではないか。

ウェイト版タロットはアダムとイブのペアをモチーフにしていて、ゲーム内でのタロットも同様だと思われる。

考えてみると <Relic> とはまさに禁断の「知恵の実」である。それを「食す」ことによって、Vくんはそれまで知らなかったこの世界のあり方を突きつけられ、もとの生活、つまり信頼できる相棒とメジャーリーガーになるという無邪気な夢を見る「楽園」での生活から追放され、余命いくばくもない体になってしまう。アダムとイブとは違って、バグの影響で丸出しのまま外を歩いていることもしばしばだが。

では失楽園における「蛇」の役を担うのは誰か。デクスという見方もできるが、やはりジャッキーということになるのだろうか。イブを誘惑できる力を持つ蛇は、自らの命と引き換えに「知恵の実」を差し出したのだ。

グラフィティのある場所はあのドライブインシアター。それだと「恋人」はジョニーとローグということになってしまうような気もするのだが、それはそれであのタイミングで「恋人」のトロフィーが出ることやタロットのゲーム内説明とかみ合わなくなってしまう。まあここはひとつVくんとジョニーってことでいいんじゃないかな!(雑)

 

7. 戦車

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二輪の戦車に乗る男。わたしは「戦車」がタケムラさんではないかと思う。グラフィティがある場所が、タケムラさんと話したダイナーの外だからだ。ほかにシナリオの中でこの場所を訪れたことがあっただろうか?

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カードが意味する「援軍、行動力、開拓精神」そして「復讐」あたりは、タケムラさんにあてはめるとしっくりくる。

なお作中にも「戦車(バジリスク)」は登場するが、グラフィティの場所とは関係なさそうだ。ただ「盗んだ戦車で走りだす」星エンドでのミスティの占いには「戦車」が出てきた。

「戦車」がタケムラさんだとすると、ゲーム内でのタロットの説明文にある「魂の光と闇」「良い時と悪い時を経験する」の意味がいまいちわからない。わたしはタケムラさんを見殺しにしてしまったので、もしかしたら見ることができなかった部分でそのあたりの描写があるのかもしれない。

「戦車」は7番目のアルカナであり、西洋において7という数字は「変容」や「運命」を意味する。ゴミ捨て場でVくんを拾い上げ復活を遂げさせたタケムラさんは、Vくんにとっての「7」と言えるのかもしれない。

 

8. 力

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身分が高くはない服装の女性。さらにその中にライオンを手なずける女性が描かれている。「愚者」には犬が登場し、「愚者」は犬を見ていなかったが、「力」のカードに描かれた女性は犬よりも狂暴なライオンと向き合い、素手(「男根の象徴」とかを持っていない)で手なずけている。「愚者」からここまで旅をする中で、ずいぶん成長した様子である。

このカードが何を意味しているのか最後までわからなかったのだが、おそらくパナムではなかろうか。カードがあったここは、パナムとの出会いの場所だ。

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てっきり「星」=パナムだと思い込んでいたので、そこに思い至るのにずいぶん時間がかかってしまった。だが考えてみると「力」のカードは強い女性像である。「肉体的な強さと不屈の精神」を備えた女性というなら、確かにパナムだろう。となるとこの手なずけられているライオンはVくんか、いやソウルだろうか。「家族」と向き合おうとするパナムの姿勢かもしれない。

アルカナの意味するところは「不屈、勇気、理性、名誉」など。

 

9. 隠者

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左向き(=内面、過去志向)に立ち、灯りと杖を持つ「隠者」。

トロフィーのタイトルから、これはオルト・カニンガムのことだとわかる。カードがあるのはパシフィカのコーストビュー、ヴードゥーボーイズと揉めつつオルトとの対面を果たしたあの場所の近くだ。

アルカナの意味するものは「高尚な助言、秘匿、悟り、変幻自在、神出鬼没」だから、まったく作中のオルトそのものだ。

「隠者」はその杖と灯りから、旅を経験し後続に対して進むべき道を照らす「先人、賢者」だとみなされる。確かにオルトにはだいぶ道を照らしてもらった。

アラサカがオルトを使って具体的に何をしようとしていたのかは判然としないが、それが何であれ「オルト(あるいはブラックウォールの向こうにある大いなる意志たち)」はアラサカには(あるいは人間には)分不相応なものだった。アラサカは自らが作り出した分不相応な技術によって滅んだと見ることもできる。まさにアラサカタワー=バベルの塔で、崩壊すべくして崩壊したわけだ。バベルの塔といえば「塔」のカードのモチーフでもある。

 

10. 運命の輪

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「輪」のデザインこそウェイト版タロットカードのものをそのまま使っているが、それ以外の部分がだいぶ変わっている。もとのデザインから最も離れたのがこのカードではないだろうか。本来描かれているはずの動物たちがまったくおらず、輪の上に超越者はおらず、この男性は明らかに死んでいる。どうしてこうなったのだろう。「輪」、すなわち円環とは永続性の象徴のはずなのに、なぜ死んでしまったのか。

トロフィータイトルによれば「運命の輪」はアンダース・ヘルマンのことである。グラフィティのある場所もサンセットモーテル、ヘルマンを連れ込んだあそこである。タケムラさんに尋問された後で彼が死んでしまったということだろうか。

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見えづらいが真ん中下段にグラフィティがある

ゲーム内説明にもあるように、「運命の輪」が意味するのは「変化」である。

ただ振り返ってみても、ヘルマンがこの物語にそんなにたいそうな変化をもたらしたようには思えない。Vくんを調べてみたけどやっぱりこのままだと死にます! という程度の結論じゃなかった? それともわたしが何かのイベントを見逃しているだろうか。

むしろヘルマンの尋問後、ジョニーの方に変化があったように思う。あのあたりからジョニーがVくんに心境を語り始めたような。

ヘルマンのせりふの中で重要そうなのは、ジョニーがVくんの意思決定に影響を及ぼしているのではないかという仮説である。それはおそらく逆もありえる。コンストラクトは元人格に影響を与え、元人格もコンストラクトに影響を与える。きっとそうなのだろうとは誰もが考えることだが、技術者の側からそれが言及されたのがここだ。

わたしが「サイバーパンク2077」を「バディもの」のひとつと位置付けたいのは、まさにこれが理由だ。これはふたりの相互作用、影響し合い変化していくふたりを描く物語だからだ。

そういう意味で、かなりこじつけではあるが「変化」のきっかけのひとつとなるキャラクターではあるのかな、ヘルマン。

「運命の輪」はアルカナの折り返し地点で、物語としてもメインストーリーは大体このあたりが折り返し地点だろうか(人によってどういう順番でストーリーを進めるかはだいぶ違うだろうが)。

 

そしてここにきて編集ページがだいぶ重くなってきた。

ここまで書いたものが吹っ飛ぶと立ち直れないので、まずは前半記事だけアップしておくことにする。後半はまた近いうちに。

 

続きました。

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