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失われた眼は何を視る「ハウスオブザドラゴン」1-8感想

https://twitter.com/HouseofDragon/status/1579293927152095232/photo/1

「ハウスオブザドラゴン」シーズン1もいよいよ終盤。

やっとお膳立てが整ってきた。

さあさあさあ、さっさと戦争を始めて国土を焼こうぜ!!! それがターガリエンってもんだろ!?(1カ月半ぶり2度目)

以下、わくわくの8話ネタバレ感想

 

 

 

 

 

 

 

失われた眼

いやいやいや、やってくれたなヴィセーリス。

最初から散々「お前が悪い」と言い続けてきたわたしだが、最後まで言わせてもらおう、お前が悪いと。

母親を亡くした子どもともっと対話しろ。

王のくせにほうれんそう不足が過ぎる。

子どもへの事前の根回しや了解がないまま再婚するな。

子どもと同世代の女性と結婚するなっていうか子どもの親友と結婚するな。

子どもが問題行動を起こしたときもちゃんと対話しろ。

言葉にしなくても気持ちが伝わっていると思うな。子どもはエスパーではない。

眼前にある明らかな問題に見て見ぬふりをするな。

妻がどんな問題を抱えているかについても対話して解決しろ。

というか対話を拒否するな。

不仲な人同士を集めて形ばかり無理やり仲良しにさせるのをやめろ。

自分好みのホームドラマ強制は周囲の地獄度を深めるという自覚を持て。

 

もうね、今回のヴィセーリスの描写に対して「いいパパだった」とかいわれるとガチギレしそうだ。クソオブザクソやろが!!!!!

お前が家族同士の相互理解にかける手間を惜しんだせいでターガリエンが滅ぶのでは???? 何もかもお前のせいなんだが????

相互理解というのは表面的に笑顔を浮かべることではなく、強制的に握手させることでもなく、互いに言葉を尽くして妥協点を探ることだろ!!!!!!!

なんで政治に携わる人間が交渉ごとの初手から間違ってんだよ!!!!!!

おめーがやってんのは「トーク(対話)」じゃなくて「スピーク」だよ!!! 家族に対してもずっとそうだったよ!!!

お前が愛してるのは家族の幻影であって、家族ひとりひとりの望みや悩みに目を向けたことなんか一回もないやろが!!

「眼を失う」というのはそのことの比喩でしょ?(今週の王の小指コーナーはここですませるよ)

お前は何も見えていない、見ようとしていない、すべての問題から目を背けて、蓋をして、なかったことにして、仮面によって表面を取り繕って、表面的に穏やかであればいいと思っている。最終形態ヴィセーリスはそういう比喩の塊だったわけだ。最初に「約束」の象徴である小指を失い、そして「理解する see こと」の象徴である眼を失ったわけだ。

先週アリセントが「あの子の眼も奪え」と言っていたが、結局ヴィセーリスが眼を奪われることになった。責任を負うべき人が負ったと言えなくもない。

あとこれは言っておきたいが、食事前にグロを披露するのはやめろ。食欲なくなるだろ!!!! 素顔を受け入れてほしい気持ちはわかるが、時と場合を考えろ!!!!!!

 

死んだ人の悪口を並べまくってしまったが、舌は残しておいてほしい(急に冷静になる)。

いやヴィセーリスの笑顔が好きだったのは本当だよ。でも王としても父親としてもダメなものはダメだし、彼の行為に共感する人を見ると「頼むから現実世界で彼のようなことはしないでくれ」と思うのだ。

 

 

ヴィセーリスの「遺言」

で、最後の遺言について。

いやアリセントは王がレイニラに向けて言おうとしていたことをちゃんとわかった上で、あえて「わかりました」って「誤解」しようとしてるよね?

最初は「何言ってんだコイツ」みたいな顔をしてから、その意味まではわからないながらもその重要性は理解して、それから長い沈黙とともにその「遺言」をどう扱うかを吟味して、「わかりました」と言っている。

これはあれだな、アリセントが「王は最期に『エイゴンが国を一つにすべし』ってわたしに言いましたー!!!」と主張することになるんだろうな。それがヴィセーリスの遺志に反しているとわかっていて。

 

これはわたしの想像だが、ヴィセーリスはアリセントとの間につくった子どもたちと、ほとんど話したこともないのではないだろうか。あんなに待望の男子だったのに。おそらくはエイマへの罪悪感から。ヴィセーリスはエイマへの罪悪感から「レイニラを玉座につける」と決めて、それを守ることで贖罪にしようとしていた。

レイニラに対して「私の唯一の子」と言うのも相当な問題発言だ。アリセントとの間の子どもたちがなかったことにされている。あの尻出しノルマ王子もお前の子だが??? もしかしてアリセントの前で「唯一の子」発言を漏らしたことがなかっただろうか?(「エイマ」と呼び間違えたりもしていたし)もしそんなことがあったら、それは彼女にとってどれほどの絶望になるだろうか。

子どもたちは問題行動を起こすし、父親は子育てに無関心だし、アリセントは本当に孤独だったはず。オットーがアリセントにしたような干渉までいかなくても、せめてレイニラに向けている関心の何割かでもエイゴンやエイモンドに向けてくれれば、子どもたちの育ち方も少しは違ったのではないだろうか。

ヘレイナが「夫に無視されても結婚はいいもの」とか言っていたが、あれも相当に不穏な発言だ。娘にあんなことを言われて、母親としてどう思ったか。

しかしヴィセーリスへの積もりに積もった不満はあれど、アリセントがヴィセーリスを最期まで介護したのは立派だった。侍女に丸投げだってできたはず。丸投げしないまでも、夜の世話くらいは任せることだってできたはず。

晩餐の場でもレイニラの方には顔の醜い面を見せず(顔の左半分はずっとレイニラの方に向けられていた)、醜い面まで見せられるのはアリセントだけ。アリセントにはずっと介護されて、もっと醜い部分まで見られてきたのだろうから、今更取り繕う必要がないのかもしれない。とても象徴的な場面だった。

アリセントからヴィセーリスにどれほど「愛情」があったのかわたしにはわからないが、十数年にわたって子育てと介護の両立を続けてきたからこそ(というか子育てと介護を同時進行でやるのって、いくら周囲に助けてくれる人が多くてもきつい……)、最期に「遺言」を聞くことができたわけだ。

その十数年の苦労を思えば、「遺言」をちょっと独自解釈しちゃうくらいはいいじゃん! と考えてしまうのも無理はないのかもしれない。

 

それからエイゴンにレイプされた侍女の処遇について。

ゲースロ世界なら、というかサーセイなら、そして現実の中世ヨーロッパなら、あの侍女は殺されていただろう。アリセント以外の小評議会議員に知られても殺されていただろう。もしくは政治利用されただろう。王家のスキャンダルや世継ぎの火種となるものを知るとはそういうことだ。アリセントもそれは十分知っていたはず。

アリセントは彼女を守ったのだ。

しかし、最後まで守ることができたかどうかはわからない。

 

 

白蛆は誰のスパイ?

アリセントの侍女は白蛆に通じていた。彼女はエイゴンの乱暴狼藉や、王家のホームドラマ()について白蛆に報告したに違いない。

以前、白蛆はオットーのスパイだった。今もそのまま、ということでいいのだろうか? オットーは数年間王都を空けていたが、その間に上司は変わっていないだろうか?

王家のホームドラマについては、オットーも同席していたから報告の必要はないはずだ。もし白蛆の上司が今もオットーなら、あの報告はエイゴンの乱暴狼藉についてだろうか?

もしオットーにそのことが知られたら、レイプ被害者の女性が殺されないだろうか? 大丈夫?

 

 

デイモンとエイモンド

次男であるがゆえに王位を継げないことへの鬱屈した気持ちは、デイモンにこそ理解できるはず。「なのに」なのか、「だからこそ」なのか。ヴェラリオン家の次男氏(名前を最後まで覚えられなかった)を文字通りの一刀両断にしたのは。

「わかるよその気持ち」とはならなかったのかな。

「自分は王位を諦めてレイニラを立てて生きると決めたのに」になったのかな。

ヴィセーリスが「お前はドリフトマークの次男坊にすぎない」と言ったのを聞いて、デイモンはどう思っただろう。

あのシーン、デイモンが Say it! と言うのを聞いて即座に BASTARDS!!! と叫んだら、次男氏もすぐに同じことを叫んだので笑ってしまった。

あれはどうしてわざわざ言わせたのかな。ドリフトマークをルケアリーズに継がせることがレイニラとデイモンの得になるのは間違いない。そのためには次男氏を黙らせたい、というか消したい。合法的に(言うほど合法的だったか?)消すためには、王に「野郎ぶっ殺すぞ」と思わせなければならない。

……みたいな思考をたどったのだろうか。うーん、利益のためなら妻と子を公然と罵倒させる方を選ぶのか。どう解釈すべきかねこの人。

ついでにここに書いておくが、次男氏が頭を落とされた直後、ヘレイナが耳を塞いでいたのが気になった。この場で塞ぐなら普通は目なのでは? ヘレイナには何か不思議な力がありそうだが、何かが「聞こえる」力だったりするのだろうか。

 

ところで、エイモンドがデイモンに似た感じに成長して、デイモンの行動に目をきらきらさせていた。次男同士、憧れるものがあったのだろうか。会うのは久しぶりのはずだが。

エイモンドの前に置かれた豚を見て、レイニラの息子がクスクス笑っていた。ドラゴンを持てなかったエイモンドに豚を渡して笑ってたな、そういえば。カチーンときてもおかしくないよな。

しかし「ストロング」ネタは今までだって散々言われてきただろうに、さらっと流せないものかな。まあ流せないか。場所が場所だし。

エイモンドのこのやり方は実にデイモン的なふるまいだ。トリックスター的というべきか。周囲を挑発し、怒らせて喜ぶ子ども。ふたりが視線をかわしたとき、何を思ったのか。

エイモンドにはデイモン的な面白さ、大物らしさがあるが(比較対象が尻出しのエイゴンだしな)、しかし彼は次男。「次男坊」は跡継ぎにはなれないことは、今回改めて示された。さて今後彼はどうなっていくのか。

 

「ゲームオブスローンズ」時代から9話爆弾はでかいと相場が決まっていたが、いよいよ次回、9話。ヴィセーリス死亡イベントはもうすませた。次回何が起こるか楽しみだ!

 

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